脳梗塞の治療法
脳梗塞治療の中心は薬物治療。発病してから1~2週間は点滴治療で、病状が落ち着いたら内服治療へ切り替えます
脳梗塞の急性期治療
脳梗塞を発症してから約1~2週間は、手足の動き、言葉が出ない、意識がなくなるといった症状が進行することがあるので、以下の薬物で治療していきます。■血栓溶解療法
脳血管が詰まって障害を受けた脳細胞は、早めに血液の流れを回復させることで機能回復が可能になります。血液の流れを回復させるための薬が「tPA」という薬。この薬は欧米では1990年代から使用されていますが、日本では2005年10月から正式に認可を受け使用可能になりました。この薬は症状が出現してから3時間以内に使用することが肝心。3時間を超えると脳出血を起こす危険性が高まるため、脳梗塞が疑われた場合はすぐに医療機関を受診しなければなりません。病院における診察および検査の時間を考慮すると、できれば2時間以内に医療機関に到着していることが望ましいですね。
■抗凝固療法
脳血管が詰まってしまうと、その他の血管も詰まってしまうことがあるので、血液が固まりにくくなる薬を投与します。代表的な薬は、ヘパリン、アルガトロバン、ワーファリンなど。
■抗血小板療法
血液を固める働きがある血小板の機能を抑えることにより、血液の流れを改善する治療方法。代表的な薬はオグザレルナトリウム、アスピリン、シロスタゾール、クロピドグレル。
■血液希釈療法
脳細胞がダメージを受けた周囲の血流を改善させるために、血液の粘々を薄くする薬剤を使用します。代表的な薬は低分子デキストラン。
■脳浮腫軽減療法
脳細胞がダメージを受けた場所はむくむことが多いので、薬剤投与により浮腫みを取ります。代表的な薬はグリセオール、マンニトール。
■脳保護療法
脳細胞のダメージを進行させるフリーラジカルを取り除く薬。腎臓が悪い人には使用できません。代表的な薬はエダラボン。
脳梗塞の慢性期治療
症状が安定してきたら、将来の脳梗塞を予防するために、脳梗塞の原因に応じて以下の治療方法を行います。■抗凝固療法
主に心房細動という心臓の不整脈が原因になって起こるタイプの脳梗塞には、ワーファリンという薬を投与。ビタミンKを豊富に含んでいる納豆・青汁・クロレラ・モロヘイヤなどの食材で作用が弱くなるので、摂取を避けてください。特に納豆は他の食品に比べてビタミンK含有量が多いだけではなく、腸内でもビタミンKを作るので、摂取を中止しても3~4日は薬の効果を弱めてしまいます。
■抗血小板療法
脳血管を詰まりにくくするために、血小板の機能を低下させる薬物を使用し、血液の流れを回復します。アスピリン、チクロピジン、シロスタゾール、クロピドグレルという薬剤を基本的にはどれか一つを選んで内服。動脈硬化が強く、脳梗塞の再発が高い場合は、2剤以上組み合わせて投与することも。
■手術療法
頚動脈が詰まりかかっている場合は、手術治療を行い血管のつまりを解消します。これを頚動脈内膜剥離術(けいどうみゃくない・まくはくりじゅつ)といいます。最近、カテーテル治療の発展により、頚動脈が詰まりそうなところにステントと呼ばれる金属の筒をいれ、血管を広げることをする場合(CAS)があります。
また、頭皮の血管を頭の血管につなぐことにより、脳血流を回復させるバイパス手術という治療法が選ばれることがあります。
脳梗塞の予防法
こんな人が脳梗塞になりやすいので、自分の健康診断の結果をみてチェックしてみましょう。- 血圧が高い
- 糖尿病がある
- 悪玉コレステロールが高い
- 善玉コレステロールが低い
- 中性脂肪が高い
- たばこを一本でも吸う
- お酒を毎日1合以上飲んでいる
- 肥満体型だ
- 心臓病や不整脈を健康診断で指摘された
- 家族に脳卒中の人がいる
- 運動不足
- ストレスが多い
6個以上当てはまる人は、かなり危険な脳梗塞予備軍と言えます。まずは、生活習慣を変えること。なんとなくエレベーターに乗っていませんか? なんとなくタバコを吸っていませんか? なんとなく、とりあえずビールにしていませんか? いつもの習慣を少し変えるだけで、脳梗塞は予防できます。ぜひ、実践し続けてみてください。高血圧、糖尿病、脂質異常症と診断されたら、適切な内服治療を行うことが必要です。
急激な温度変化は血管や心臓に大きな負担をかけるので、暖房のきいた部屋から寒いところに移動するときには注意が必要。トイレや脱衣所などにも暖房器具を置いて寒さ対策を。
夏場は汗をかいて体の中の水分が少なくなりやすいので、1日に1リットルから1.5リットルの水分を摂るように心掛けて下さい。心臓病がある人は、水分の摂りすぎが心臓に負担を掛けることがあるので、主治医と相談して下さい。
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