山に囲まれ、村の中心をのどかな川が流れています。
日田へは電車もありますが、福岡や長崎からJR日田駅まで直行バスが出ています。駅からは車で30分。(一応バスも出ていますが、あまりに本数が少ないので、時間を要チェック。皿山駅まで約40分)。細い急坂を上った山の上にぽっかりと広場があり、村全体をぱあっと見渡せる絶好の高台になっています。四方を緑の山に囲まれ、こじんまりと寄り添うように家が建っている、どこか懐かしい静かな村。昔にタイムスリップしたような、のどかな日本の風景が広がっています。広場には無料の駐車場がありますので、そこに車を止めて、しばらくぼーっと景色を眺めてもいいでしょう。(ふもとにも駐車場がありますが、上の方が広いと思います)。
小鹿田焼陶芸館。小さいながら、見ごたえあり。
広場の脇には「小鹿田焼陶芸館」があります。入場は無料なので入ってみましょう。また陶芸館は通常無人です。靴を脱いで、自分で部屋の電気を付けて、館内を見学します。一部屋だけの本当に小さいスペースですが、様々な技法の器を一同に見られるので、なかなか見ごたえがあります。片隅には、さり気なくバーナード・リーチの作品も展示されていました。(日田駅近くには、小鹿田古陶館というのもあります)。
唐臼。樋に溜まる水によって上下します。ししおどしの原理。
陶芸館でしっかり予習をしたら、いざ窯元へ出陣!と、その前に、そういえばさっきから何か、ぎぃー、ぎぃー、ごっとん!と不思議な音が聞こえます。音のする方へ歩いてみると、なんと巨大ししおどし?!大きなシーソー状の丸太がどかんどかんと土を叩いています。いやいや、これはししおどしではなく、陶土を粉砕するための大切な道具、唐臼(からうす)といいます。村の中心を流れる川の水を樋から落として、自然の力だけで動くようになっています。なんとも原始的なしくみ。各窯元がこれを持っていて、あちこちでこの、ぎぃー、ごっとん、の音が響いています。こんな土作りをしているところは、世界でもここだけでしょう。この村に生まれた職人さんのひとりは、「子どもの頃は子守唄代わりだった」なんていいます。独特の素朴な音色は、「残したい日本の音風景100選」にも選ばれているそうです。(ちなみにこの村は国の重要無形文化財指定を受けています)。
さて、さらに小鹿田焼はガス窯や電気窯も使っていません。全て登り窯。登り窯というのは、左の写真のように緩やかな坂状に窯が作られており、一番低いところから薪をくべると、火が坂を登り、一番高いところの煙突から煙となって出て行くしくみ。年に5,6回ほど窯を焚くそうで、丸2日、職人たちが交代で寝ずの番をするそうです。全て昔ながらの完全なる手仕事で、文明の利器は一切使っていないんですね。
工房の様子。
飛びかんなを作る様子。右は完成した器。
さて、小鹿田焼の模様付けの技法として、特長的なもののひとつが「飛びかんな」といわれる技法。お皿の表面に、縦長の細かい点々が、まあるく円状に描かれています。たまたまその作業を行っている窯元さんがあったので、見学させてもらいました。1.5cmくらいの弾力性のある細長く平べったい金属板を手に持ち、器の表面に触れるか触れないかの位置でちょっと傾けてロクロを回すと、一定のリズムで土に引っかかりながら、点々と表面を弾くように連続的な模様が付けられていきます。1つ作るのに1分もかからず、熟練の職人による鮮やかな手さばき。よーく構えて見ていないと、ぼっとしているうちに出来上がってしまいます。(他に、刷毛目、打ち掛け、流し掛け、櫛描き、指描きなど、小鹿田焼には様々な技法があります)。
様々な器があって楽しい。
各窯元の横には直売所があり、器を購入できます。小鹿田焼ならではのベースはあるものの、窯元によって作風が微妙に違うので、一軒一軒回って、お気に入りを探してみてください。家族代々続いている窯元なので、父と子の作品でも、また違いがあって面白いです。一番多いのは白地ですが、他に飴釉のものも多く、南仏かメキシコの民芸品のような、大らかでゆったりと陽気な雰囲気に心惹かれます。窯元は10軒といえど、果てしなくどっさり器が並んでおり、何を選ぼうかとにかく目が泳ぐので、時間にはある程度余裕を持ったほうがいいかと思います。
村の風景。器がずらっと並んでいたり、土を乾燥させてたり。左下は包み紙の図案。
春と秋にはお祭りがあり、たくさんの人で賑わいます。器の販売もあります。
●唐臼祭
5月3・4・5日
●民陶祭
10月 第2土・日曜日(2010年は10月9・10日)
小鹿田焼公式HP(現在工事中)
http://www.onta.jp/
日田市観光協会のHP
http://www.oidehita.com/