ある日突然、遭遇した恋人の交通事故。そのときから山崎えり子さんの介護生活が始まりました。まだ若い二人に降りかかってきた、あまりにも突然の出来事でした。
著書「頑張らなくてもできる介護」(家の光協会)は、そんな彼女がまとめた、介護の知恵ブック。節約カリスマ主婦として有名な山崎さんですが、介護もまた、工夫を重ねつつ「自分流」を通しておられます。同書で紹介されている、頑張らなくてすむ介護ノウハウに学んでみましょう。
「‘良い介護をしてあげたい’‘いい妻と思われたい’と第三者の目を意識していた自分が、頑張る介護をしてしまっていたのです。シンプルに生きるには、見栄を捨てることだとわかっていたのに、自分は見栄を捨てられていなかったと痛感させられました」
あとがきに書かれたこの言葉、介護問題を抱えている方なら、思わず「うん、うん」とうなずいてしまうのではないでしょうか。けっして放棄するわけではない、公的なサービスを大いに利用しつつ、自分にも相手にもやさしくできる介護をめざしたいのだ――と強調する山崎さん。10年にわたる経験の末、行き着いたのはお互いを楽にする「シンプルな介護」でした。さて、具体的にはどのようにシンプル介護を実践されておられるのでしょうか。同書から、その一部をご紹介しましょう。
頑張らない介護1・やわらかくとろみのあるメニューを簡単に
うまく噛み砕いたり、嚥下したりできない方には、やわらかく、とろみのあるメニューづくりが不可欠。でも、素材をやわらかくしたり、とろみをつけたりするには、それなりの時間がかかるもの。そこで山崎さんが考えたのは、こんな食材によるやわらかメニューです。
・餃子の皮
パスタ・うどんのかわりに使います。皮を麺のように細かく切り、にんじんやほうれん草、油揚げなどを入れて味付けし、煮込めばあっというまに出来上がり!のど越しもよく、とろみ加減も十分な一品になります。
・とろろ昆布
市販品をちぎっておかゆに入れるだけで、簡単にとろみがつくので便利!ぱさつく肉や魚を食べやすくするときにも活躍してくれます。
・コンソメスープ
2分の1カップを溶き卵1個と混ぜ、かまぼこ、ゆでて刻んだ青菜などとともに耐熱容器に入れてオーブントースターで焼けば、即席茶碗蒸しの完成です。1000Wのオーブントースターなら7~8分で仕上がるそう。中心に水分が集まるため、蒸し器や電子レンジのお世話にならなくても大丈夫。コンソメスープのかわりに、コーンスープなど好みのスープを使っても。
頑張らない介護2・洗濯物を減らす
在宅介護で困るのが、大量の洗濯物。でもこんなちょっとしたアイデアで、余計な洗濯物は減るんです。
・紙おむつをおむつカバーに
昼間は布おむつ、夜は紙おむつを使う場合は、紙おむつをおむつカバーとして利用すると便利。昼に、おむつカバーとして使った紙おむつを、夜は布おむつを取って、そのまま使うのです。経済的なうえに、洗濯物も減って一石二鳥!
・外出のときは汗取りタオルを
汗をかく季節には、やわらかいタオルを服と背中の間に入れます。余分な部分は頭の下で折っておきましょう。こうすることで背中から首まわりにたまる汗が吸い取られ、服を洗濯しなくてすみます。外出から帰ったら、タオルを引き抜きましょう。
頑張らない介護3・清拭を楽チンに
清潔は大切。そうはいっても、大の大人の全身清拭は一苦労ですよね。気になるところをこまめに洗ってあげれば、作業はかなりラクになります。
・足浴しよう
寝たきりのかたを全身浴させるのは一苦労!全身の清拭だって、大変です。そこでおすすめしたいのが、部分浴や足浴。足浴するときは、たらいにお風呂の温度と同程度のお湯を入れ、冷めてきたら、あらかじめ用意してあるポットからお湯を足すようにします。指の間などの細かいところは軍手にせっけんをつけてこするとよいでしょう。ぬるま湯に手をひたし、マッサージしてあげてもOK。
・陰部浴はこまめにやる
陰部は、台所用洗剤の空き容器をきれいに洗い、ぬるま湯を入れたものできれいにします。最後にお湯をひたしたタオルで前から後ろに拭いてあげて。陰部浴は毎日、月曜日は足浴と体をさっと拭くだけ、火曜日は・・・などと決めておくと気が楽に。
「山崎式手作り介護生活」という副題がついたこの本、あちこちにイラストがちりばめられ、便利なグッズの作り方が載せられています。介護における生きた知恵が満載されているばかりでなく、著者の本音が語られているのも魅力。ご主人による声「介護される立場から」も参考になります。書店で見かけたら、ぜひ手にとって見てくださいね。