少子高齢化・核家族化が進んだ昨今、高齢者の方自らがその家族を介護しなければならない、あまりいい言葉ではありませんが「老老介護」という問題が持ち上がっています。今回の「50代からの健康法」では、現役医師として実際の現場から見た医療について、特にみなさんが今後遭遇されるであろうという問題を取り上げたいと思います。


「序章」青天の霹靂(へきれき)

救急車
緊急出動に備えて24時間待機! 病院スタッフだけではなく救急隊員の方も、本当にお疲れ様です
最初に数例の実話に基づいた症例について、「創作」として記述します。

Aさんは80代の男性で70代後半の奥さんとの2人暮らし、2人の子供は独立して家庭を持ち、仕事の都合で少し離れた県外に住んでいました。Aさんは若い頃に「肺しんじゅん」(奥さんから伺った病名です、おそらく結核と思われます)を患ったほかには血圧が少し高めというぐらいで健康そのもの、定期的に近くの診療所に通院していました。ある日、いつものように農作業のために早朝から出かけたのですが、お昼になっても家に帰ってこないため、心配になった奥さんが見に行ったところ畑で倒れて呻(うめ)いているAさんを見つけました。

すぐに救急車を呼び、30分後にはB総合病院に救急搬送され、「脳梗塞・不整脈」と診断されました。適切な治療が行われた結果、かろうじて命を取り留めることはできましたが、発症してから時間が経ちすぎていたのでしょうか、Aさんには半身麻痺・言語障害の後遺症が残り、ひとりでは歩くことのできない体になってしまいました。

さて、ここからが本題なのですが、こうした急性期疾患を治療する病院(急性期病床)では入院日数に制限があります。短いところでは2~3週間以内、長いところでも概ね3ヶ月以内(※最下部に補足します)とされています。Aさんの奥さんも同様に、急性期の治療が終了した後で「これ以上の治療はできません。ご自宅に帰られますか? それともリハビリのできる病院を探しますか?」とB病院からの退院を勧告されました。


自分で病院を探すといっても、どうすれば良いのかなんて考えたこともありませんから、突然の退院勧告にAさんの奥さんは戸惑ってしまいました。リハビリも含めて、ずっとこの病院で治療を受けられるものと思っていたからです。すると主治医から「地域連携室で相談してみませんか?」と促されました。


次のページではAさんの奥さんが相談した地域連携室の役割と現実をご紹介します。

(※)一般的には急性期病床の診療報酬(病院収入)は3ヶ月を過ぎると一定額になり、それ以上の治療をすると病院にとっては赤字となります。ただし、患者さんの状態によっては3ヶ月を過ぎても治療に応じた医療費(出来高算定)になりますし、あるいは3ヶ月以上かかる場合には差額ベッド代としてその分を個人に負担していただくという病院もあります。

差額ベッド代として月に50万円以上かかるところもあると伺ったことがありますが、医療機関では患者さんの状態に応じてそれ以上の負担を強いられるのが実情です。ガイドの経験ですが、急性期病床で人工呼吸・高カロリー輸液管理を行った場合の診療報酬点数を基準にすると、3ヶ月目以降も月に70~80万円以上かかることがほとんどでした(全身状態不良のための出来高算定でしたので、病院に入る医業収入はマイナスにはなりませんでした)。ただし、療養病床では治療費も含めた診療報酬が一定で治療費として請求できないため、差額ベッド代が高額であったり、あるいは最初から受け入れができなかったりということが多いようです。