日本人が毎日お風呂に入るようになったのは、意外と最近のことなのです
お年寄りと暮らしていると、思わぬ場面でジェネレーションギャップや価値観の違いを感じてしまうことがあります。そのひとつが「衛生観念」。同居や介護を続ける上で、それが意外なわだかまりとなり、ストレスに発展してしまうことも。さて、こんな場面、あなたも心当たりはありませんか?


入浴を嫌がるお年寄り


「おばあちゃん、お風呂わきましたよ」。声をかけても、「もう眠いから、今日はいい」と布団にもぐりこんで目をつぶっている、認知症のお年寄り。
「そうか、それじゃしかたないなと思って、最初は放っておいたの。でも、翌日も、またその翌日も同じことの繰り返し。『だめよー、いい加減に入らないと。虫がわいちゃうから』そう強く言ったらしぶしぶ起きたのはいいんだけど、『しょっちゅう風呂をわかしたりして。もっと節約しないと家計がもたないよ』ですって」。

ご主人のお義母さんと同居している知り合いの女性が、こうボヤいたことがあります。

お年寄りと暮らす家族から、似たような話をいくつか聞きました。



・夜、髪を洗うと冷えるからと、普段はシャンプーしない。昼間、洗ってもらっているが、口すっぱく言わない限り、自分からはしようとしない。そのうち、髪がごっそり抜けるようになったので、皮膚科に行ったところ、毛穴に細菌が入り、脱毛症になっているとのことだった。

・下着を毎日取り替えない。洗濯籠を見ると、一週間近く、お年寄りのものだけ入っていない状態だ。ズバリ指摘すると、傷つけてしまうのではと、注意するのがためらわれるのだが・・・。



清潔の文化


じつは、日本人が毎日お風呂に入ったり、下着を取り替えたりするようになったのは、わりと最近のことだといわれています。地域にもよりますが、戦前、戦後くらいまで、お風呂はせいぜい週に一度。洗髪も二週間に一度くらいだったとか。下着も毎日取り替えるなどということはありませんでした。

現在のように、毎日お風呂をわかし、洗濯できるようになったのは、1960年頃に水道やガスが普及してから。それまでは井戸から水を汲み、火をたいてお湯を沸かしていたわけですから、身ぎれいにしたくとも、なかなかそうはゆかないのが現実でした。また、すべての家に内風呂があるわけではなかったのです。

『清潔文化の誕生』(スーエレン・ホイ 紀伊國屋書店)によれば、アメリカで清潔志向が浸透しはじめたのは、1930年代以降のことだったそう。学校教育での衛生教育、石鹸や洗剤、上下水道、トイレやバスルームなどが次第に普及し、1950年代頃、ようやく定着するに至ったようです。

日本でも事情は同じ。物のない時代のこと、自分の体を清潔にすることより、水や薪、布などを大切に使うことが重要だったのでしょう。当時の人々からしたら、朝シャンなど「言語道断」というわけです。

認知症を患っていると、生活習慣も昔返りするといわれます。お年寄りの中で最近の暮らしが影をひそめ、若かった頃の生活ぶりがよみがえっているのでしょう。現在の自分たちの習慣を押しつけるまえに、お年寄りが生きてきた歴史を理解することも大切といえそうですね。もちろん、不潔にしていたために、脱毛症やその他の病気になってしまっては、よくありませんが。デイセンターの入浴サービスを利用するなどして、定期的に体や髪をきれいにしてあげてください。



ただし、「これまで心身ともに元気で身ぎれいにしていたのに、最近かまわなくなった」という場合は要注意!認知症の前兆かもしれません。また、何日も下着を洗濯しようとしない場合は、尿モレを恥ずかしがり、「下着をしまいこんでいる」または「自分でこっそり洗濯している」などの可能性もあります。気をつけましょう。

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