/薬の基礎知識

薬の長期処方は何日まで?そのメリット・デメリット

【薬剤師が解説】高血圧や糖尿病、高脂血症など慢性疾患でいつも飲見続けている薬。忙しくて病院に行けず、時々切らしてしまうことはある、なんて方はいませんか? 長期処方は何日まで可能か、また、長期処方を受けるメリット、デメリット、注意点を解説します。

三上 彰貴子

執筆者:三上 彰貴子

薬剤師 / 薬ガイド

薬の処方日数制限について

問診

長期処方を希望する場合は、医師にご相談ください

Q:数年前から高血圧で病院にかかっています。薬を飲み始めてから血圧は安定しているように思います。高血圧は慢性疾患ですので、これからずっと薬を飲んでいくことになると思います。でも、現在病院から処方される薬は、毎回2週間分です。これまでは頑張って通院していたのですが、最近仕事も忙しくなりまして2週間に1回、病院に行く時間をとるのが大変になってきました。行けなくて、時々薬がなくなってしまうこともあります。もう少し長く処方してもらうことはできないのでしょうか。

A:そうですね。仕事など忙しくて薬を取りに行く時間がない場合もありますよね。現在は、一部の薬を除いて処方日数の期限制限がなくなりましたので、長期間の処方ができる場合があります。ただし、発売一年以内の薬でしたら14日処方になります。次回、長期処方ができるかどうか、受診の際に医師に相談してみてください。

長期処方の日数……多くは1カ月~60日程度、時に90日も

平成14年度の診療報酬改定(治療や薬などの値段の見直し)から、一部の薬を除いて処方日数(投薬期間)に上限がなくなりました。そのため、医師の判断で原則的には日数制限がなく長期処方は可能です。

ただ、平成28年4月の診療報酬改定時期より、医師会等が長期処方では薬の飲み残しや副作用が発見しにくいなどの理由で、特に病院では30日を超えての処方を出さなくなったという状況があるようです。(長期処方をするには次回受診日を必ず決めて、次回もきちんと診れることができるならば、長期処方ができるというという医療機関もあります。)

現実には、病状は安定しているか、副作用は出ていないか、きちんと飲んでいるかどうか、など色々なことを考慮して、長期処方とは言っても大体1ヶ月から長くても60日ぐらいの処方が多いように感じます。時々90日もあります。

また、次に紹介する薬は、処方期間(投薬期間とも言います)に制限があります。

処方期間に上限がある薬

処方期間(投薬期間)に上限がある薬として以下のような薬があります。

・発売されてから1年以内の薬→14日分を限度
(正確には、「薬価基準記載の日の属する月の翌月から1年を経過していないもの」です。)

・向精神薬、麻薬などの薬→14日、30日、90日分を限度
(薬剤によって異なります)

※上記の薬の中にも長期旅行など事由によってはこの限りではありません。詳しくは、お近くの薬剤師にお聞きいただくか、記事最後の参考リンク等をご覧ください。

次に、長期処方のメリットと注意点についても解説します。

処方期間の考え方・メリットと注意

ご質問の答えとしては、先述の通り、一部を除いて処方期間の制限がなくなったとはいえ、医師の判断で14日、またはそれ以下の処方期間になる場合があります。

処方している薬が新薬(発売されてから1年以内の薬)の場合は、効果や安全性等をより注意深く診ていく必要がありますので、14日またはそれ以下の処方期間になります。新薬かどうかは、医師や薬剤師に聞いてみてください。

この場合は、残念ながら長期処方の対象外ですので、面倒でも2週間に1回は病院に行かなくてはなりません。長期処方に関しては、発売後1年経ってからご相談ください。

※医師から「一年経ったから長期処方ができる」ということをお話しくださるかもしれませんし、病状によって可能ならば長期処方できる薬に変更できる場合もあります。医師にご相談ください。

また、病状等から医師の判断で14日やそれ以下の短い投与になることがあります。それは、初めての処方、使用してから間もない場合、病状が安定していない状態、副作用が懸念される場合などの理由が考えられます。

症状(病態)や体質に合わせて、薬の種類や薬の量をコントロールするためなど、安定するまでは、医師の判断の上、様子を見ながら処方期間を決めていきますので長期処方ができないことあります。

それ以外にも、安定していたのに病状が変わった場合(改善や悪化など)や、他の疾患を併発してしまった場合(糖尿病、高脂血症等)など、病状によっては、医師の判断で長期処方ができなくなることもあります。

長期処方のメリット……時間的・経済的なメリットも

長期処方は、病院に何度も行かなくていい、通院にかかる交通費がなくなるという時間的、経済的なメリットがあります。

それ以外にも、病院においては診察の回数が減りますので、その分の診察代や処方せん発行料等が不要になります。また、同様に薬局においても薬を調剤する費用(注)が不要になります。ただ、処方期間に応じて薬の数が増えますので、その薬の分は値段が高くなります。

慢性疾患の場合、長期的に薬を使うことになる場合がほとんどです。そのため、これらの時間的、金額的メリットに関しては、長期的に非常に嬉しいことでしょう。

(注)薬が正しく処方されているかどうか監査したり、相互作用や副作用の有無を調べたり、これまでの服用履歴を確認する等の薬局業務に対する費用

 

長期処方のデメリット……病状変化や副作用の発見遅れも懸念

一方で、医学的な観点からは、あまりにも長く病院や薬局を訪れないと、病状の変化や副作用の発見が遅くなることも懸念されます。


ご自身の体のことですから、長期処方に関しては医師に十分相談してください。そして、安定していても定期的にはきちんと受診するようにしてくださいね。また、いつも使っている薬だからと安心せず、もし何か変だなと思うことがあったら、すぐに医師や薬剤師に相談してみてください。

*ネット上での診断・相談は診察ができないことから行えません。この記事は実際の薬局での会話をもとに構成したものです。相談が必要な方は、医師や薬剤師に実際にお聞きください。

【参考リンク先】
外来薬剤の投与期間制限について>広島大学病院薬剤部薬務室
平成14年度社会保険診療報酬等の改定概要>厚生労働省 
Q&A>大阪府薬剤師会

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
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