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専門用語解説「ドーピング」<基礎編> ドーピング基礎知識(2ページ目)

スポーツ競技の使用禁止薬物リストをみていると「えっ!こんなものまで」というのと「なんで?」というものがあります。冬季五輪も間近に迫っている今、ドーピングについて解説してみましょう。

執筆者:赤堀 一仁

外から加えられ、その動向が追跡できる化学物質と違い、もともと体の中にある物質はどうでしょう?これらの生体内物質は本来、体が作り出したもので現実に存在しています。例えば成長ホルモンや男性ホルモンなどがそうです。

前回夏季オリンピックのシドニー大会では、体内物質であるエリスロポエチンのドーピング判別可能、と予めアナウンスされ業界関係者でも「どうやってできるんだ?」と話題になりました。結局、これに関する摘発はありませんでしたが、人の体が作り出した、本来持っているエリスロポエチンと製造されたそれの電荷の違いを調べ、血液と尿、双方の結果で判定するのだそうです。

エリスロポエチンについて解説すると、さまざまな貧血の治療などに用いられる血液製剤なのですが、でもちょっとよく考えてみましょう。よく高地トレーニングといって競技の数ヶ月前に、わざと気圧が低くて酸素濃度の少ない、標高の高いところで持久力のトレーニングする方法があります。このトレーニングによって少ない酸素環境に対して、体は酸素を運搬する赤血球を多く作るようになってきます。結果として高地トレーニングは、エリスロポエチンのドーピングと同じような結果が得られるのです。高地トレーニングは認められてエリスロポエチンはドーピングになるのはちょっと矛盾しているように思いませんか。

では自分の血液の輸血はどうなのでしょう。酸素を供給している赤血球を、予め採取しておいた自分の血液から作って試合前に体にもどすと持久力が上がるとされています。

医薬品として流通しているエリスロポエチンなどの体内物質は、アレルギーの可能性が少しでも心配されないように、人の体が作り出すものと全く同じ物を作るように研究開発が進められているのです。いつの日か人が作るものと全く同じものが作られてドーピングが判別できないようになってしまうかもしれません。現に後2年ほどで現在の検査方法では判定不能になってしまうという報告もされています。

再生医療が話題となっている現代では、クローン技術を使えばその人が作ったものと同じ物質を作る事だって可能になりつつあります。そうでなくても遺伝子を作り変えて超人的な能力を獲得する事も考えられます。でもこうなってしまったら人が個人ではなくなってしまう事になってしまうかもしれません。

もしかしたらもう既に現実の話しかもしれません。誰にも判らないのようにするのがドーピングの目的ですから。

ドーピングは反社会的行為なのですが、何が悪いのかはスポーツマンシップに反する行為である事です。しかし、スポーツがビジネスとして成立している現代では、勝者となるためにはぎりぎりの手段を使ってその成果をあげようという考えが生まれてしまいます。そんな誘惑の先にあるのが薬物を使う事になるのでしょう。勝つ事によってその選手、そして国家を含めた関係者に経済的メリットがあるとそうは簡単にいかないのかもしれません。

自分自身に対して忠実に競技に望み、それを誇りにする事。そして、ドーピングをしていない事を称賛する我々スポーツ観戦者としての姿勢が必要なのではないのでしょうか。

今度のソルトレークシティでは、人類が作り出す芸術的なスポーツの祭典になることを期待して、今から楽しみにしています。

後編へ続く>こう読む!ドーピングニュース

<関連リンク>
・Dr.高橋正人のドーピング相談室( HomePageTop
・日本オリンピック委員会(アンチドーピング
・三菱化学ビーシーエル(ドーピング検査のご紹介
・Think Doping (何故、ドーピングはいけないか?
・STUDAY OF CIVIL LAW
スポーツにおけるドーピングの法的諸問題
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