なぜ効くの? スポーツ飲料

水筒
ちょっとした水分補給のために水筒を携帯するのも良いでしょう。脱水にならないうちは普通のお茶でもかまいません
よくスポーツ飲料を飲ませるとよい、と言われることがあります。では、普通の水を飲んでも脱水は回復しないのでしょうか? ここでちょっとした実験をしてみましょう。コップ3杯の水を用意して、一度に飲み干してみてください。

いかがでしょうか? コップに3杯の水というのは、案外と飲もうと思っても飲めるものではありません。これに対して、同じ量のスポーツ飲料だと比較的簡単に飲めてしまいます(もちろん、前もって水を飲んでいない条件のときです)。

実は、この基となる実験は古くから知られています。本来は脱水を起こしたラットに真水、濃度の高い食塩水、体液に近い塩分を含んだ水分、これらの3種を与えた場合の影響について調べられています。それによると、結果は次のようなものでした。

  1. 真水では失われた体液の量が回復する前に、うすい尿が排泄されて体液量そのものは回復できない
  2. 濃度の高い食塩水では、ラットは体液量が回復する前に飲水を停止、さらに濃い尿を排泄
  3. 体液濃度に近い食塩水では脱水量が回復しても飲水を続け、体液量がかなり増加して初めて尿が出た

この結果をみても、脱水の対処には適度なナトリウム(塩分)の補給も必要であることがわかります。先ほど試していただいたように、人間の場合にも体液量が回復するまで真水だけを飲むというのは極めて困難です。このため、飲みやすく調節されたスポーツ飲料がよいのではないか、ということになるのです。

ちなみに、脱水症に対して初期治療を行う場合にも、ナトリウムを含んだ細胞外液に近い組成の点滴を選択するのが一般的です。尿量が減少している場合には、カリウムは毒性となることがありますので、尿量が回復するまではカリウムの成分は点滴の中には入れないためです(腎臓の悪い方がバナナや野菜などカリウムを豊富に含む食べ物に制限があるのと同じ理由です)。


脳梗塞予防にもなる脱水症予防法

緑のカーテン
地球環境も配慮した緑のカーテン、暑い夏をエアコンなしで過ごせるかも?(マンションでは消防法の問題がありますから、管理者に問い合わせてください)
昨年も「室内でも熱中症(脱水)になった!」という報道が飛び交いましたが、決して珍しいことではありません。私自身も救急病院勤務となった研修医の頃から、室内で脱水に陥った患者さんを何度も経験しています。

最も記憶に残っているのは50代前半の女性患者さんです。前日に発熱のために医療機関を受診して独歩で帰宅できたにも関わらず、翌日早朝に意識障害を呈して救急搬送となりました。

この患者さんは、西日のあたる閉めきった部屋で夕食もとらずにずっと寝ていたようです。搬送されたときには高度な脱水による腎不全・心不全など、いわゆる多臓器不全という状態でした。何とか救命することができ歩行可能なまでに回復されたのですが、もう少し遅ければどんな治療をしても助からなかったと思います。


裏を返せばこの患者さんの場合、まだ治療する余地があったということですが、本来の重症の熱中症(脱水)とは

「どんな治療をしてもすでに助からない状態」

と言っても過言ではありません。
暑いけれどもエアコンには頼りたくない、という場合には部屋の風通しをよくしておきましょう。更には地球環境までも考えた対策として「緑のカーテン」というものもあります(※)。日中はのどが渇いたと思ったらこまめに水分補給、寝る前にもコップ1杯の水分補給を。これらの対策は脳梗塞予防にも一役買うことにつながります。
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