癌(がん)/緩和ケア・ホスピス・医療用麻薬

がんの痛みは我慢しなくて良いのです(2ページ目)

がんは、その進行度にかかわらず痛みが出てきます。この10年あまり、がんの痛みに対する考え方は大きく変わってきました。がんの痛みは我慢しなくて良いのです。広まりつつあるがんの緩和ケアについてお話します。

狭間 研至

執筆者:狭間 研至

医師 / 癌ガイド

モルヒネを使うと、もうおしまい?

モルヒネを使うと、もうおしまい?
モルヒネは、決して、最後の最後に使うお薬ではありません。痛みの程度によっては、かなり初期の段階から使うこともあります。
モルヒネを使うとなると、患者さんやそのご家族の中には、「もう、いよいよダメか」と思われる方がいらっしゃいます。

しかし、現実は、そうではありません。がんによる痛みは、種々の原因で起こりますが、痛みの程度と病状は必ずしも一致するわけではありません。がんによる痛みは、患者さんの生活の質を著しく低下させますので、今は、先ほどご説明したWHOの疼痛治療の原則に従って、比較的早期からモルヒネを使うケースもでてきました。

痛み止めが効かなくなるから、ということで、痛みをがまんされているケースも、残念ながら見受けられます。しかし、モルヒネには、強力な鎮痛作用の他に、そういう薬の使用上限量が基本的にはないことも大きな特徴です。

がん治療の初期から始める緩和ケア

癌治療の初期から始める緩和ケア
がんに伴う痛みやだるさなどの体の不快な症状をとりのぞくための緩和ケアは、現在では、がん治療の初期から徐々に導入していくことが推奨されています。
がんに伴う痛みやだるさなど、体にとって苦痛となる不快な症状を取り除くための取り組みを、「緩和ケア」と総称します。

WHO方式に則ったがんの痛みのコントロールもそうですが、不安やだるさを和らげるためのアロマセラピーやマッサージ、患者さんやご家族の不安な気持ちを和らげるためのカウンセリングや心理療法など、患者さんが、その方らしく生活できるためのサポートは、すべて緩和ケアに含まれます。

最近では、がん治療の初期から、積極的に緩和ケアを併用していくことが推奨されています。すなわち、がんの緩和ケアは、本当の終末期にちょっとだけ行うものではないということです。

そういった意味では、がんの痛みについても、積極的な薬物治療による介入を行うのが現在の基本的な考え方です。

ただし、がんの痛みは、検査ではわかりません。患者さんには、是非、がまんなさらずに、痛みの程度、お薬の効き具合などを、しっかりと医師や看護師にお伝えいただきたいと思います。


【関連リンク】
疼痛治療についての基本的な考え方も解説。Q&Aもあります。⇒JPAP(Japan Partners Against Pain)のサイト

緩和ケアには鍼治療も用いられる時代です⇒ 大学病院で鍼治療!? 補完医療の最前線(All About がん・がん予防)

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