長期臥床は体内に血栓を作る
長期にわたってベッドで寝たままの体勢をとっていると、体の血管の中で、血栓ができやすくなります。この血栓が体をめぐって、肺の動脈に詰まってしまうことがあるのです。 |
特に、下肢に静脈瘤ができている方などは、要注意です。
この血栓が、体の中を巡って、肺の動脈に詰まってしまうことがあります。これを肺塞栓症と言い、手術後に患者さんの容態が急変する理由の一つになっています。
手術後は、ただでさえ血液が固まりやすくなっていることが多いのですが、それに加えて、血流が悪い部位が長期臥床では増えてしまうので、血栓ができやすくなるのです。
数日間にわたって臥床していた後、初めての歩行後、急に胸が苦しくなるということが、肺塞栓症の典型的な症状で、場合によっては命に関わる術後の合併症です。
便秘や肺炎、術後せん妄の予防にも効果的です
手術の翌朝から歩き始めることは、寝たきりや肺塞栓症の予防だけでなく、様々な良い影響をもたらしてくれます。 |
また、ずっと臥床したままだと、重力に従い、痰が背中の方にたまってしまって肺炎になってしまうことがあります。術後の肺炎は時と場合によっては致命的な合併症になってしまうことがありますが、早期に離床して、しっかりと咳をして痰を喀出することで、痰を背中にたまらないようにすることは、肺炎の予防につながります。
さらに、手術後には、患者さん自身がなぜ自分が入院し、色々な治療をうけているのかといったことなどが理解できず、少し意思疎通に問題が生じるケースがあります。これを術後せん妄といいますが、この原因の一つが昼夜逆転です。翌朝一番から、体を清拭してもらい、すっきりして体を動かし始めることは、昼夜逆転を予防するためには非常に効果的です。
このように、手術後の「早期離床」は良いことづくめです。もちろん、非常に大きな手術をした場合などには、早期離床が難しい場合もありますが、そのような時には当然、主治医からのドクターストップがかかります。
しかし、手術した部分のキズの痛みは、鎮痛剤の服用や投与で、しっかりとコントロールしていただき、主治医の先生の許可が出れば、できるだけ早くにベッドを離れ、体を起こし、動かしていくことはとても重要なことなのです。