アメリカの権威ある医学誌JAMAの最新号(2008.12月17日)に2型糖尿病における低GI食と高ファイバー(食物繊維)食の効果を比べた論文が載りました。研究をリードしたのがトロント大学(カナダ)のデイヴィッド・ジェンキンスですからご紹介しないわけには参りません。ジェンキンス博士こそが炭水化物食品の種類や形状、調理法によって食後の血糖上昇に大きな差があることを実証した、つまりグリセミック指数の考え方を提唱した人だからです。
ニンジンを生でかじれば血糖はあまり上がりませんが、同じものをジュースにすれば血糖はどんと上がります。ファイバーは同量ですから、生ニンジンとニンジンジュースのグリセミック指数の相違はファイバーのせいではありません。
さて、メタボのような糖尿病の高リスクの人が5%の減量と1日30分の運動で糖尿病予防が効果的に出来るということはよく知られています。
ところが2型糖尿病の人が経口血糖降下薬で血糖コントロールを良くしても、必ずしも明白に心臓血管疾患を減らすことが欧米では出来なかったのです。心疾患は欧米の糖尿病の死因のトップですから大問題です。
ところが低グリセミック指数の食事で、血糖コントロールと心臓予防が可能だという説がかねてからありました。今回のJAMAの論文はそれを検証する大掛りな研究でした。
新聞広告で治験の参加ボランティアを求めたところ、2型糖尿病の2,200人の応募がありましたが、各出身民族や性別、年齢、BMIを揃え、ヘモグロビンA1Cが6.2%未満の優良者や7.7%以上の不良者をカットしたため最終的に治験に参加したのは210人でした。全員が経口薬を服用しています。
この人たちをランダムに二分して、一方には低グリセミック指数の食事を指導し、もう一方には全粒粉パンや玄米のような高ファイバーな穀類の食事を指導しました。これを6ヵ月間守ってもらいました。
低グリセミック指数の食物としては、豆類、グリーンピース、レンズ豆、ナッツ類、パスタ、プンパーニッケルのようなライ麦パン、朝食のオートミールやオートブラン(ふすま)のシリアルなどです。
高ファイバー食はファイバー量を一定に保つために未精製の穀類に絞りました。つまり玄(くろ)い主食です。玄米ご飯、全粒粉パン、全粒シリアル、皮つきのジャガイモなどです。摂取カロリーはいずれも2,000kcalです。野菜と果物は同じにしました。
その結果はかなりのものでした
低グリセミック指数の食事の人はヘモグロビンA1Cが0.5ポイント%減少しました。つまりA1C 7%の人が6.5%になったのです。
高ファイバー食の人はA1Cが0.18ポイント%下がりました。
A1C 0.5ポイント%というのは経口薬のSU剤と同等の効果ですから大変なものです。高ファイバー食の0.18ポイント%はタケダの"ベイスン"のようなアルファ-グルコシダーゼ阻害薬と同じような効果です。
善玉コレステロール(HDL-C)も低グリセミック指数食では増加しましたが穀類の高ファイバー食では若干低下しました。
研究者達は6ヵ月の低グリセミック指数食でも血糖コントロールを良くして心臓冠動脈疾患のリスクを下げたと結論づけています。
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