ライ麦パンが血糖を上げにくいことは経験的に知られていました。ライ麦は精白しないで使われることが多いので、その食物繊維のせいだと考えられていましたが、どうもそれだけではないようです。
以前の食品成分表には黒パンという名称があったのですが、今はこのあいまいな表示はなくなりました。ライ麦パンというとまっ黒いパンを思い浮かべますが、本当はあれ程黒いものではありません。ほとんどがイメージを出すために着色されたものです。
ライ麦パンは風味が強いので生ガキやスモークサーモンによく合います。繊細な料理には向きませんが、食後の血糖上昇が少ないのは確かです。長い間、食物繊維が多いためと考えられてきましたが、デンプンの形状にもよるのではないかという研究がAJCN(アメリカ臨床栄養学誌、2003 11月号)に発表されました。
フィンランドのKuopio大学のDr. Katri S Juntunenらのチームは、以前から同じようなテーマで穀物の形状や製品と食後のインスリン分泌などの関係を解明しています。
糖代謝障害のない、BMI 26ぐらいの19人の閉経後(61歳前後)の女性に、50gの炭水化物(消化吸収するもの)を含むパンを朝食に食べてもらって、食後の血糖値、インスリン濃度、C-ペプチド(自分のインスリン分泌がわかる)、GIP、GLP-1(いずれもインスリン分泌を刺激する消化管ホルモン)を調べました。
ライ麦パン3種類とコントロール(対照)としての白い小麦パンです。ライ麦パンは食物繊維の種類と含有量が異なるものが3種類です。
明らかに白い小麦パンに比べてライ麦パンは、食後のインスリン濃度やGIP、C-ペプチドの濃度が低いのですが。面白いことに食物繊維の量が違うライ麦パン同士ではあまり変化がありませんでした。
それから推測されるのは、ライ麦パンが血糖をあまり上昇させないのは食物繊維の量だけでなく、デンプンの形状に特徴があるのではないかということです。
デンプン粒は穀物やイモ類、豆類によって様々な形状をとります。意外なことに、ありふれたデンプンの構造についてはまだ解明されてないことが多いのです。
料理ではいろいろなデンプンを上手に使い分けています。ふつう、『もちとり粉』に使われるのはコーンスターチ(とうもろこし)、砂糖菓子のボンボンを作る時に使うのは小麦のデンプンです。くず粉やかたくり粉もデンプンです。
食後の血糖値に一喜一憂する糖尿病者は『デンプン』にも興味がありますね。
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