スタジアムや劇場の座席を大きくしなければならなくなった肥満大国アメリカで、『肥満』治療を健康保険の給付対象にするか否かで大もめです。
この問題は以前から論議のあるものです。肥満が2型糖尿病をはじめ、高血圧やある種のガンなどの病因になることはよく知られています。でもタバコや高コレステロール血症だって同じことです。タバコが心不全や肺ガンの原因になることは医学的に証明されています。しかし、タバコを吸うこと自体が『病気』だとはとても思えません。
ワシントン・ポスト紙によると、BMI25以上のオーバーウエイトやBMI30以上の肥満が増え続けているので、官庁、民間の健康保険会社や公的な高齢者・低所得者の健康保険機構、製薬会社、科学者、人権擁護団体などが入り乱れて大バトルを展開しています。
医学的に見れば肥満が健康に悪いことは明らかです。アルコール依存症のように治療の道を開くべきだと主張する人達もたくさんいます。しかし、その予防も治療法も薬も確立してませんし、一体どの位の費用が掛るかも明らかではありません。
一方で、太ってたってどこも悪くないという人達もたくさんいます。ただでさえ、好奇な目で見られているのに、この上『病気』扱いされたらたまったものではありません。
社会的な傾向としては『肥満』は治療の対象になりつつあります。健康保険ではなく、納税の控除科目に昨年より加えられました。医療控除としてガンや糖尿病治療と同等な扱いを受けられます。
低所得者や高齢者のための社会保険も、糖尿病などの病気がなくても減量プログラムの費用が出るようになりました。公的健保では『肥満』は『病気』と考えています。
この動きが民間の健保組合へプレッシャーとなっているのは確かです。
なんと言っても肥満治療のために胃にバンドを巻く外科手術が行われている国ですから、どこまでが肥満治療なのかもよく分からないところがあります。