糖尿病/糖尿病の経口薬・インスリン

夢の糖尿病合併症予防薬か?Arxxant

変った名前ですが、「アークサント」と読みます。人類が初めて手にする、糖尿病性網膜症の治療薬。うれしいことに経口剤ですよ。ただし、発売はアメリカでもまだまだです。

執筆者:河合 勝幸

薬の飲み忘れを防ぐ小箱
薬の飲み忘れを防ぐ小箱を100円ショップで見つけました。
変った名前ですね。どう読むのでしょうか?
「アークサント」です。アクセントは"サント"にありますよ。ただし、発売はアメリカでもまだまだです。日本ではどんな名前になるのでしょうね。

世界中の糖尿病研究者が集うADA(アメリカ糖尿病協会)の第66回学会が今年の6月、ワシントン D.C.で開かれました。今年もいろいろな話題が注目されましたが、その中でもこの人類が初めて手にする糖尿病合併症予防薬はとても明るい夢を与えてくれそうです。

合併症のことは耳にタコができるくらい聞かされています。目の網膜症、腎不全、神経障害、心・血管障害、どれも願い下げですね。これらは血管の病気でもあるのです。

この合併症を予防するには、なによりも血糖値をなるべく正常値に近付けることだということがDCCTやUKPDSといった大規模研究で証明されました。でも、合併症そのものを防ぐ薬はなかったのです。昔の不摂生(高血糖)が10年も後になって出てくることも分かりました。だから、合併症そのものを遅らせる、あるいは軽減する薬があればうれしいですね。

その夢があと一歩です。


Arxxant(アークサント)は商品名で、Ruboxistaurin(ルボキシスタウリン)が一般名(成分名)です。

日本では一つの薬にこんな難解な名前はごめんですよ!
2006年8月18日、この薬を開発したアメリカのイーライリリーは医薬品の認可をするFDA(米国食品医薬品局)から承認見込み通達があったことを発表しました。人類が初めて手にする糖尿病性網膜症の治療薬としてです。うれしいことに経口剤ですよ。

ただし、FDAは追加データ提出を要請しました。この薬のように前例のない新しい薬には、安全のためにより多くの「人」による治験が求められるのです。これを受けてイーライリリーは現在継続中の研究で間に合うか、それとも新たな試験を行うべきかの検討に入っています。

このニュースでアメリカの株式市場は少々失望したようです。もっと楽観的な観測だったからです。なにしろ、初めての合併症の治療薬ですから、年間1,000億円以上の売上げが期待されていました。細小血管の合併症治療薬ですから、世界中の多くの人が苦しむ末梢神経障害にも望みがあったのですが、残念ながらこの分野は有効性が証明できませんでした。

これも株式市場を弱気にさせる一因ですが、イーライリリーは別のスタディデザインを考えているようです。なぜなら、今回目標にした足の病変としての"しびれ"や"痛み"、"灼熱感"などは主観的な表現ですから、病気がよくなって神経に感覚が戻ってくるとよけいに痛みが強くなることだってあるのです。これでは良くなっているのか、悪くなっているのか分かりませんね。

イーライリリーはこの薬の腎臓の合併症治療にもテストをしています。こちらは今回の学会でも希望が持てる発表がありました。

>>次のページでどんな効果が期待できるかみてみましょう。>>
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