経口薬には5つのクラスがあります。それぞれが別の役割で血糖を下げます。 |
インスリンが分泌されるメカニズム
すい臓のランゲルハンス島にあるベータ細胞にブドウ糖が取り込まれると、次のような変化が起きます。1. ブドウ糖が代謝されて高エネルギー物質のATPができる。
2. それを感知してATP感受性カリウムイオンチャンネルが閉じる。
3. そうすると、膜の内外の電位が変化して、電位依存性カルシウムイオンチャンネルが開く。
4. 入ってきたカルシウムイオンがインスリンの細胞外への放出を刺激する。
スルホニル尿素薬は2の段階の「ATP感受性カリウムイオンチャンネル」にベータ細胞の外から結合して、このチャンネルを閉じるのだと考えられています。
あとは同じように進行しますから、そもそもベータ細胞がインスリンを産生しなければ血糖は下がりません。薬の失効が問題になりますが、本当はベータ細胞のダウンのようです。
ですから、薬が効かないからと言っても2種類以上のスルホニル尿素薬の併用は治療上無意味なのです。
問題は……?
問題は、スルホニル尿素が結合する「ATP感受性カリウムイオンチャンネル」が体中の細胞にあることです。スルホニル尿素薬で体重が増えるのはよくある話ですが、これも満腹神経中枢のレプチン受容体にこの薬が干渉しているのでは?という説があります。
スルホニル尿素が心筋細胞のカリウムイオンチャンネルに結合することがいつも論議をよぶのです。
プラス面もマイナス面もあるからです。
前回取り上げたCMAJの論文では、トルブタミドもグリベンクラミド(グリブリッド)も心臓死のリスクが高いと結論づけられました。
グリベンクラミドは高率で心筋細胞のATP感受性カリウムイオンチャンネルに結合することが知られています。
同誌の提案では、カナダの2型糖尿病経口薬として第1選択薬がメトホルミン(グリコラン、メルビン、メデット)、第2がTZD(s)、第3選択薬としてスルホニル尿素薬になっていますが、同じスルホニル尿素薬でも心臓への影響が少ないグリメピリッド(アマリール)、グリクラジド(グリミクロン、他)、別のタイプの薬ですがナテグリニド(スターシス、ファスティック)を選ぶように薦めています。
スルホニル尿素薬はジェネリック薬がたくさんある安価なものですから、製薬会社も医療も研究に力を入れていません。
しかし、世界中で多くの人が服用している大切な薬です。より安全なものが欲しいのです。
今日では経口薬は5クラスもあって、それぞれが別の機序で血糖を下げてくれます。
医療から提供される薬がどんなものであるか、正しく理解することは私たちの責任ですね。
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from All About[糖尿病]