イーライ・リリー社(アメリカ)が人類史上、初めてインスリンを製品化したのが1923年ですから、私たちはまだインスリンを手にしてから83年しかたっていません。
それなのに1型糖尿病を発症したロバート(弟)とジェラルド(兄)のクリーブランド兄弟(アメリカ)が、同じようにインスリン歴75周年を祝ったのですから感動しますね。
ジェラルド(Gerald Cleveland)とロバート クリーブランド(Robert Cleveland)
(左)ロバート クリーブランド 86歳 インスリン歴81年 (右)ジェラルド クリーブランド 90歳 インスリン歴75年 |
1型を発症したのは弟のロバートの方が早くて5歳の時、兄のジェラルドは16歳で発症しました。
専門家によると、「子供の時の発症でジェラルドのように90歳と長生きした例はまず無く、ロバートのようにインスリン歴81年というのも史上初めてではないか」ということです。
ロバートが子供の頃、バースデーケーキはお母さんが作ってくれました。オートミールの空箱をクリーム色の紙で包み、上にキャンドルを立てた特製バースデーケーキです。
「甘いものは何も食べさせてもらえませんでした。絶対に!」
食事療法で砂糖の制限がなくなったのは、糖尿病治療の先進国アメリカですら1994年のことですから、いかに厳しい食事制限に耐えてきたのかをしのばせるエピソードです。
母の愛、妻の愛あればこそ
クリーブランド兄弟が子供だった頃、糖尿病治療も試行錯誤の時代でした。ただ、厳格な制限食と規定通りのエクササイズが血糖値を安定させ、インスリン量も減らせて危険な低血糖も防ぎやすくなることは医師たちも理解していました。
でも多くの糖尿病者はその意味が分からなくて、医師の指導を守らない人が大勢いたのです。
そんな中で、兄弟の母親ヘンリエッタさんだけはしっかりと指示を守りました。子供たちにもよく教えたそうです。
ロバートによると「とても炭水化物の少ない食事で、牛乳を1日に1.5リットルも飲まされて、野菜とタンパク質の多い食事」だったのです。
母親は全てを計算して、兄弟もその通りに食べたのです。朝食のパンはきっちりと20gに計量されていました。ロバート少年はパンをひと切れ全部食べさせてもらった記憶がないのです。
だから、ジェラルドは90歳になった今でも食品の栄養成分をよく読みます。「糖尿病のある人でも成分表に注意を払わない人が大勢います。炭水化物とは何か、糖が体の中でどのように使われていくかを理解しなくてはいけないのに……」
兄弟は両親に守られて成長し、最愛の伴侶を得て、子供たち、孫、曾孫(ひまご)にも恵まれています。
ジェラルドの奥さん、ミルドレッドは残念ながら2002年に亡くなって62年の結婚生活にピリオドを打ちましたが、病床に伏している時でも無意識にジェラルドの手を探って発汗をチェックしていたそうです。
夫の低血糖を見守ることがミルドレッドの習慣になっていたのですね。
実際、具合がよくて起き上がることが出来た時は、昔と同じように冷蔵庫からオレンジジュースをもって来てくれました。うーん、泣けますね……
ロバートの奥さん、ルースは看護師です。結婚歴58年、「私の知っている限り、ワイフより糖尿病のことをよく理解している人は誰もいない」とはロバートの言葉です。
ホントでしょうね。超ベテランナースで、ギネスブックに載るようなスーパー病人の夫人なんですから。
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