トリノ大会でもスーパー1型が活躍
荒川静香の女子フィギュア金メダルで、やっと胸のつかえがおりた冬季オリンピックですが、このトリノ大会でもスーパー1型糖尿病スキーヤーが大活躍していました。なんと、ゴールと共に肩で息をしながら倒れ込んでしまう、あのクロスカントリーの選手です。アメリカチームがメダルを託したクリス・フリーマン(Kris Freeman)がその人です。
2003年の世界選手権大会で15kmクロスカントリーで4位に入賞して、アメリカに20年ぶりのベスト記録をもたらしました。トリノでは25歳ですが、20歳の時に1型を発症しています。
15kmでは今大会もソルトレークと同じ22位でしたが、40kmリレーでは第1走者として出場して、先頭から僅か10秒遅れのトップグループで次の走者にタッチしました。結局、アメリカチームは12位に沈んでしまいましたが、クリス・フリーマンは立派に責任を果したのです。
フリーマンはこの日のリレーの前に10回も血糖測定をしたと言っていますが、インスリン注射は1回のみでした。ハードトレーニングですから、1日に10回もインスリン注射をすることもあるそうです。
食事はオートミール、フルーツ、肉類、野菜が主になります。オート麦は高タンパク、高水溶性ファイバーですから理想的な穀物ですね。
スキー選手を支えているのはほとんどがスポーツ用具メーカーですが、この異色のスキーヤーはインスリンメーカーのElly Lilly(イーライ・リリー)とジョンソン&ジョンソン(血糖測定器:ライフスキャンも商品の一つ)、オーストリアのスキーメーカーFischerがスポンサーについていました。
大リーグのサウスポーもスーパー1型
トリノだけではありません。スーパー1型は、球界でも活躍しています。ジェイソン・ジョンソン投手の足元がふらつくのを見たコーチが、上衣にコーラを隠し持ってマウンドに近づきます。内野手も駆け寄ってジョンソンを輪のように取り巻きます。
打ち合わせをしているように見えますが、人垣の中ではジョンソンがレギュラーコーラを飲んでいたのです。低血糖でした。そして数分後にまた150kmの速球が戻りました。ジョンソンがまだマイナーリーグのシングルAにいた頃のシーンです。
クリーブランド インディアンズの現役メジャー、ジェイソン・ジョンソン投手は11歳の時に1型糖尿病を発症していたのです。しかし、彼は大リーガーになる夢をかなえました。右投げ右打ち。151kmの速球とスライダーが武器です。
そして、阪神タイガース 岩田稔
今年、阪神タイガースに入団した岩田稔投手も1型糖尿病を持っています。それは、高校2年生だった、2001年の冬の出来事でしたが、never give up!の闘志で、見事に阪神からドラフト指名を受けることができました。同じ障害を持つ子供たちの歓声が、マウンド上のサウスポー・岩田稔に届くとうれしいですね。
岩田稔 プロフィール
ところで、岩田選手が1型を発症して「もう野球が続けられない」と絶望していた時、同じ1型ながらエアロビクス選手としてユースエアロビクスのワールドチャンピオンにもなった、大村詠一選手との出会いがありました。
この両君のインタビューがイーライリリーのサイトに載っています。
糖尿病とのつきあい方、将来の希望などのメッセージがあります。
すてきなビデオインタビューですよ。ぜひ、ご覧ください。
ところで、シンシナティ・レッズやニューヨーク・ヤンキースでプレーをしていたビル・ガリクソン投手を覚えていますか?
1988年、1989年の2年間、日本の読売ジャイアンツにも在籍してましたね。メジャーで通算162勝も上げたピッチャーですが、やはり彼も1型糖尿病と闘っていました。社会的貢献をした1型糖尿病者を表彰するため、日本糖尿病協会が制定した「ガリクソン賞」にその名を冠されています。
エアロビックの大村詠一選手も2002年に同賞を授賞しています。
阪神タイガース、岩田稔投手の名前が、先輩ビル・ガリクソンと並ぶのが楽しみです。