高血圧症/高血圧薬・降圧剤

気になる生活習慣病を考えよう 血圧の薬が働くポイント(2ページ目)

高血圧の薬を使っている人も、血圧が気になるけれど見てみないフリをしている人も、血圧の薬について調べてみましょう。

執筆者:赤堀 一仁

血管が収縮するのを和らげる
抵抗改善系


前のページでは血圧を発生させる側を抑える働きの薬の解説でした。
ここからは受け止める側をコントロールさせる薬の解説です。

  • αブロッカー:交感神経の緊張を和らげる>血管が収縮するのを止める
  • カルシウムブロッカー:血管平滑筋の緊張を和らげる>血管の収縮を止める
  • レニン・アンギオテンシン系:血圧上昇物質の働きを和らげる>血管の抵抗性を下げる


αブロッカーは先のβと同じように昔から使われてきている薬ですが、全身的に働く事が副作用などにつながり、あまり利用はされていません。カルシウムブロッカーはそのするどい効き目と副作用の少なさや脳血管障害などの予防効果などが期待できることから最も広く使われています。レニン・アンギオテンシンは比較的新しい分野で、高血圧治療薬の新製品はこのあたりに集中しています。

・αブロッカー
血管を収縮させる働きのある交感神経α受容体をブロックする事で血管を広げ、血圧を下げるように働きます。塩酸プラゾシンが代表的で、語尾が(~ゾシン)となっている事が多いです。

立ちくらみが起きないのは、交感神経による血管の収縮でコントロールされているので、このポイントに働くαブロッカーを使っていると立ちくらみを起こしやすくなってしまいます。でも前立腺肥大症に伴う排尿障害も心配な人には向いているといえます。血圧の他にもこのような症状をやわらげる効果もあるからです。

・カルシウムブロッカー
カルシウムブロッカー
ご年配の方にもよく使われている
ニフェジピンや塩酸ニカルジピンなどが代表選手で語尾が(~ピン)となっている事が多いようです。

血管の周りの筋肉の収縮をやわらげる事で、血管が硬く狭まるのを防いで血圧を上昇させないように働きます。血圧を下げる働きが強い上に、狭心症や脳血管障害などを予防する効果も期待できるのでメインの薬として使われる事が多く、高血圧の治療薬の代表選手と言いきっても言い過ぎではありません。

その血圧を下げる働きがするどいあまり、はじめて使う時などに微妙なコントロールが必要な事もあるようです。それでも特徴的な副作用も少なく効果も充分なのでご年配の方にも向いていて、多くの方が利用されています。高血圧薬の約半数がこの種類に分類されるのも高血圧薬のメインストリームの証ともいえます。

・レニン・アンギオテンシン系
腎臓にある血圧上昇に関係しているアンギオテンシンに働く種類ですが、その働き方を細かく見ると実はこの中にもふたつの種類があります。

・ACE阻害薬(エーシーイーそがいやく)
カプトプリルや塩酸エナラプリルなどが最初に作られてきた製品で(~プリル)という名前が多いようです。

正式には「アンギオテンシン変換酵素阻害薬」というちょっと難しい名前の略名です。アンギオテンシンという物質が酵素によって変換されると血圧を上げる物質に変わります。その酵素による働きを防ぎ、血圧を上昇させる働きの物質が作られないようにする事で結果として血圧を下げるという働きによるものです。

ACE阻害薬はここ20年くらいの間に出てきた新しいタイプの種類です。緩やかな働きと体への安全性が注目されてきましたが、現在では副作用の空咳(からぜき)が比較的見られやすい事からちょっとクセのある種類の薬という印象になっています。副作用について基本的には医師や薬剤師が注意していますが、使っている間に風邪でもないのに咳が続いているような事があれば、あなたご自身でもこの薬の副作用を疑う必要があるかもしれません。気管支の病気をお持ちの方はこの点に注意が必要です。

そんなACE阻害薬ですが、心臓の血管障害や動脈効果などにも効果があるとされ、その他の生活習慣病を合併している人などにはよく選ばれているようです。咳の症状がなければファーストチョイスになりえるでしょう。

・ARB(エーアールビー)
カンデサルタン・シレキセチルやロサルタンカリウムなど(~サルタン~)という名前がつくのが特徴です。

こちらも、「アンギオテンシン2-レセプター-ブロッカー」の頭文字をとってARBと略名で分類されています。先ほどのACE阻害薬はアンギオテンシン2ができるのをストップさせるのに対してその働きをストップさせて血圧を下げるように働くものです。

ACE阻害薬の咳の副作用が指摘され始めた頃から、それに代わるように開発されてきた種類の薬です。もちろんACE阻害薬で指摘されていた咳の副作用がない上に、体へのマイルドな作用という良い所はそのままに、それでいて最近ではカルシウムブロッカーににせまる血圧を下げる働きのするどさも兼ねそろえてきています。

唯一の不安は実績の少なさですが、世界的にみれば多くの使用実績もあり、高血圧薬の今後のニューカマーといえる存在でしょう。

まとめ

血圧測定
まずは受診、あなたの血圧管理
さてさて、高血圧の薬についてカケアシでおおざっぱに分類して解説してきたのですが、今回の記事は、あくまで分類してその特徴をピックアップしただけもので、実際にはお薬の商品名や成分名からどの分類になるのかはご自分で調べないといけません。
「おくすり110番」など「病院/処方箋の薬を調べる」のおすすめINDEXからジャンプして手間をかけて頂かないといけませんが、「そんなのめんどうだよ」という人は今度お薬をもらう時やお近くの薬局の薬剤師に気軽に尋ねてみましょう。そんなあなたの薬はどの種類でしたでしょうか?注意する事がありましたでしょうか?今度の診察の時に医師とのコミュニケーションのお役にたてれば何よりです。

そうはいったものの、このシリーズもここで終わりというわけではありません。長いおつきあいになる高血圧の薬の事ですからもう少し詳しく知っておいた方がいいかもしれません。そこで、次回は高血圧の薬にまつわる疑問などをQ&A形式で解説していきたいと思います。

<注意事項>
あなたの薬の事については、あなたと主治医の間で決められているものです。今回の記事の内容はあくまで一般論という事をご理解いただいて、固有のご質問などはおかかりの医師や調剤してもらう薬剤師に直接確認をして下さい。

薬の成分の名称から調べた場合には、同じ成分のものでも多くの製品があります。公正なサイトとしてユーザーの皆さまに情報を提供するために成分の一般名を用いて記事を製作させていただいております。わかり難い表現である事をお詫びしますと伴に、お手数をおかけします事をご理解をいただいて情報のご利用をお願いいたします。


【関連リンク】
今年はやるぞ!ダイエットfrom AllAbout薬について
新基準で血圧に泣く人が増える?from AllAbout家庭の医学
AllAbout関連サイト
ダイエット
糖尿病

日本高血圧学会
JNC7日本語解説from 札幌厚生病院循環器科
National Heart, Lung, and Blood Institute(NHLBI)
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