うつ病治療薬の副作用

ストレス時代の今日、うつ病が社会問題になっていることは新聞報道等で皆さんもよく知っていることと思いますが、その治療に使われる抗うつ剤、それも世界で最もよく処方されている(もちろん日本でも)塩酸パロキセチン水和物(製品名 パキシル)に新しい副作用が見つかりました。
PCO
うつ病は心の風邪と言われていますね。

New Scientist誌9月号に「パロキセチンが精子のDNA崩壊に強く関与している」との報告が掲載されました。

また、アメリカ生殖医学会でニューヨークのコーネル・メディカルセンター&ボストンのハーバード大学による発表もありました。

そこで男性不妊専門医の恵比寿つじクリニック辻院長先生に聞いてみました。

辻先生コメント

SSRI(抗うつ薬)は日本でも一般的に使われており、非常に良いお薬です。ただ、私もこの薬を服用しておられる患者さんで二人ほど精液所見が不良なことがあり、薬を中止すると改善傾向になることを経験していましたので、このニュースもそういう話だと思っていました。

しかし、内容を読んでみるとコーネル大学で35人の健康な男性にSSRIであるパロキセチンを5週間服用してもらい、その前後で精子を調べたところDNAフラグメンテーション(DNAの損傷)の比率が13.8%から30.3%に上昇したという報告でした。DNAフラグメンテーション30.3%というのは結構悪い所見ですが、それより驚いたのは精子の数、運動率、形態は正常だったという結果です。つまり、一般的な精液検査ではSSRIの精子への悪影響を判断できないということになります。
PCO
薬の副作用を理解するためにもドクターへの報告は大事です。


男性不妊症でSSRIを服用しておられる患者さんについては、精液所見が正常でもDNAフラグメンテーションを調べなければならないのかと考えますが、一方でタバコの精子への傷害に比べれば大したことないとも思います。SSRIはとても良いお薬で、うつの治療のためにどうしても中止できない患者さんもいらっしゃいます。不妊症の治療のためにSSRIを中止するかの判断をするときには精子のDNAフラグメンテーションを調べるべきかもしれません。

パロキセチンだけでなく抗うつ薬全般に性欲の低下などの性機能障害の副作用があるのは以前からよく知られていたことです。パロキセチンでも服用された男性の1/3に勃起不全や射精困難が認められたとの報告があります。抗うつ薬を服用されていて不妊治療も受けておられる方で、思い当たるところがあればぜひ主治医にご相談なさってください。

最後に

どうも男性のうつ病は不妊治療に悪影響があるということがわかりました。うつだと基本的に元気のない状態ですが、治療薬によってそれが加速してしまうのはなんとも皮肉な感じがします。

不妊治療の際、他の疾患で他の病院治療をされているのであればそれを明確に伝えていくことが大事というのもわかりますね。
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