患者さんはどう考えて何を求めているのか。先生は不妊治療や患者さん、そして医療をどのように捉えているのか。そして厚生労働省を主体とした国の方針や医療保険はどうか?また不妊治療のサポーターであるナースやカウンセラー、そしてエンブリオロジスト(註1)はどのようなことを考えて治療にあたっているのか。偏らない情報を提供できればと思っています。
そこで今回、第一弾としてガイド自らが不妊カウンセラーTさんへのインタビューを行ないました。Tさんは看護婦、助産婦の両方の資格を持たれており、現在2つの病院を掛け持ちのナース兼不妊カウンセラーです。そのコメントをご紹介して参りましょう。
--なぜ、不妊治療を専門とされたのですか?
Tさん:助産婦として、子供を産み育てる事の喜びを一人でも多くの人に触れてもらいたいと願うからです。
--治療で一番気をつけていることはなんですか?
Tさん:治療についての質問には医療用語をできるだけさけ、的確にいつでも迷わず答えられる知識と自信を持ちつづけることです。
--不妊治療で最も大事なものはなんですか?
Tさん:不妊患者において共通する原因要素の1つは精神面です。女性の身体とホルモンバランスは精神面に左右されやすいため、そのサポートは必須といえます。
--カウンセリングにはどのくらい時間がかかりますか?
Tさん:約1時間かけております。
--カウンセリングで困る事は?
Tさん:カウンセリングの場所の確保はどの病院でも難しいことです。プライバシーを守る為、予約についても余裕を持ち患者同士が会わないようにするなどの細かい配慮をしなくてはなりません。そして、話しやすい穏やかな環境作りも大切です。
--いい患者さんとは?
Tさん:カウンセラーは常に患者と同じ目線で話す立場であり、患者の良否をつけるものではないと思われます。患者にとって一番のポイントは精神面のコントロールと思われるため、いかにお気楽な不妊生活をエンジョイできるかが、妊娠への近道になって行くと思われます。
--悪い患者さんとは?
Tさん:夫婦間の問題であるため、どちらか一方が不妊の原因となっていても、相手をせめず、思いやりをもって協力しあえる環境が理想でしょうが、協力が得られない場合、患者の母親、姑を同伴することは間違いです。
質問の中には、夫婦間の性生活について触れることもあるため、治療を受けることを決断したならば、自立心を備えていただきたいです。
--先生との連携で注意している事は。
Tさん:治療方針については先生によってそれぞれ異なる為、必ず先生と患者間の説明内容を把握しておきます。(カルテなど・・)
--初めて診察される患者さんへのアドバイスは?
Tさん:不妊治療に関しての本をたくさん読む必要はありません。しかし、女性としての基本的な知識、小学校中学校で習う性教育のレベルは持っていてもらいたいです。
--治療で最も嬉しかった事は?
Tさん:妊娠だけがゴールではなく、妊娠に至らずとも治療経過の中で少しずつ内面が素敵な女性へと成長していく姿を見ていくことです。
お忙しい中、快くインタビューに答えて頂いたTさんに心から感謝致します。
(註1)
エンブリオロジスト:臨床の場において、精子や卵を扱う仕事を行っています。AIH(人工授精)での精液調整や、IVF-ET(体外受精-胚移植)での採卵から受精、培養、胚移植といった一連の作業、管理にあたっています。必要な方にはICSI(顕微授精)や受精卵の凍結保存なども行います。