女性ホルモン補充療法(HRT)ってなんですか?
簡単にいうと、「足りなくなった女性ホルモンを少し補ってあげることで、症状を軽くしてあげよう」というコンセプトです。同じく女性ホルモンのお薬としてはピルがありますが、ピルは基本的に排卵を抑える目的なので、HRTとはちょっと違います。具体的に言うと、ピルのほうがやや作用が強いものになっています。ピルについて詳しくはピルについて詳しく教えて!シリーズへどうぞ)
女性ホルモン補充療法(HRT)ってかなり怖いものなんですか?
やっぱりホルモン剤ってなんか不安かも… |
具体的には、骨粗鬆症、大腸癌は減るけれど、乳がん、心臓発作や脳卒中、血栓症といった血管が詰まりやすくなるデメリットは多くなってしまう、という結果でした。
ただ、この一年後の2003年に、日本更年期医学会と日本産婦人科学会がこの発表を受けて、公式見解をだしています。その内容を簡単にご説明しますと
・NIHの調査は一つの調査結果として尊重すべきだが、より詳しい調査が必要
・この調査が日本人の健康女性に同じように当てはまるかは疑問
の2点にまとめられます。
なぜかというと、対象となった米国女性は、米国でいうところの平均健康女性なのですが、肥満(試験対象女性の平均BMIは28.5、具体的には身長160cmの人なら73kgが平均体重だったということ)、高血圧(試験対象女性の約1/3)、喫煙(試験対象女性の1/2が経験あり)、HRTの経験(試験対象女性の1/4が経験あり)といった、本来なら病気のリスクが高いと考えられる人を多く対象にしているため、日本人の基準にこれをそのまま当てはめられるかどうかはまだ検討の余地ありと考えられるからです。
という訳で…
結論としては、更年期障害にはもちろん食事や運動、栄養など、生活習慣から対応するのが一番だけど、それでも厳しい場合はお薬での対処も考えましょう、という結論なのですね。女性ホルモン補充療法(HRT)はホットフラッシュなどの更年期症状の緩和に効果的なのは明らかだから、採血とか、がんになるリスクとかを考えながら慎重に一人一人のリスクとデメリットを秤にかけて考えましょうという結論なのです。
そして、ガイド的にも、これは非常に論理的な結論だと思います。そもそも、お薬はすべてメリットとデメリットが有り、デメリットのない薬というものは存在しないわけです。もちろん薬をのまないですめばそれに越したことはないのですが、何らかの問題を解決するためにメリット>デメリットだからお薬を飲む、というスタンスが一番自分のからだにとって良いのではないでしょうか。
というわけで、一つのお薬の選択肢として女性ホルモン補充療法(HRT)は考えてもよいと思います。ただ、お医者さんとよく相談してくださいね。
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