エコノミークラス症候群とは?
長時間同じ姿勢を保つ空の旅によってエコノミークラス症候群を発症することもありますが、持病によっては繰り返すことがあります |
また、肺血栓塞栓症では、中心部の太い部分から離れた末梢部、つまり、やや細くなって更に詰まりやすい肺動脈を閉塞してしまうと、その部分に限って完全に血液が流れなくなり、肺組織の壊死(えし)を起こすことがあります。この場合、肺梗塞(はいこうそく)と呼ばれますが、少し複雑になってしまいますので、用語を整理するためにここからは「エコノミークラス症候群」イコール「肺梗塞を伴わない肺塞栓症」としてご説明します。
どう違う? 血栓症と塞栓症
塞栓症は体内の他の場所、例えば、ふくらはぎの血管の中に生じた血液の固まりが血流に乗って他の部分に運ばれて血管を塞いでしまうことを指します。これに対して血栓症とは、原因となった血液の固まりが、その場の血管内で生じた場合です。このため、肺血栓塞栓症、いわゆるエコノミークラス症候群の大部分を占める「塞栓症」では、高脂血症や下肢静脈瘤(じょうみゃくりゅう)など、もともと血液の流れが滞りやすい持病を有する人に危険性が高まると考えられます。日常生活を極限にまで制限される避難生活の場でも、同じように血液の固まりが生じやすくなってしまいます。
この他、塞栓の原因となる物資には、潜函病としても知られる空気塞栓、大腿骨など太い骨を骨折してしまうことによる脂肪塞栓、各種の癌による腫瘍塞栓があります。なお、「脂肪」塞栓ですが、この場合の多くは骨折などによって骨髄内から流出した脂肪であり、メタボリック・シンドロームや外見的な肥満とは直接には関係しません。
次のページではエコノミークラス症候群の症状と予防法をご紹介します。