視力矯正・コンタクトレンズ・メガネ/コンタクトレンズの選び方・メリット・デメリット

長期間コンタクトレンズを使用している方は要注意 コンタクトレンズと角膜内皮障害

角膜(目の黒目の部分)内側の内皮は角膜の透明性を保つために重要です。コンタクトレンズの不適切な使用による角膜内皮障害は失明の原因となります。

西園寺 克

執筆者:西園寺 克

医師 / 感染症・健康情報ガイド

聞き慣れない言葉ですが、角膜内皮障害を取り上げます。特に長期間コンタクトレンズを使用している方に是非知って欲しいと思います。コンタクトレンズの不適切な使用による角膜内皮障害は、失明の原因となります。

【どうして角膜を大切にするのか】

角膜(目の黒目の部分)は、空気に接している上皮と内側の一層の内皮からできています。角膜は人体の中では不思議な部分で、血管がありません。血管がないということは、角膜の上皮と内皮は赤血球から酸素をもらうことができないということです。つまり、空気から直接酸素を取って生きています。
角膜の上皮は、空気に接しているので十分な酸素を受け取ることができます。一方内皮は、角膜上皮を通過した後の酸素を使うことしかできないので、基本的に酸欠になりやすいのです。

角膜の上皮は、目にゴミが入ったり、花粉症で目を強く擦った時に傷付きます。そのときに上皮は神経があるので、痛みを感じます。でも、傷付いても数日あれば再生する能力があります。一方、角膜内皮は上皮に守られているので、傷付くことが通常はありません。しかし、上皮と違う点は、神経がないので痛みを感じないこと、そして再生能力がない点です。

角膜の大切な機能は、透明で光を通すということです。その角膜の透明性を維持しているのは、痛覚があり再生能力がある角膜上皮ではなく、酸欠になりやすく、再生しない角膜内皮の方なのです。
角膜内皮の数(密度)は、年を取ると健康な人でも少しずつ減って行くことが確認されています。減少に伴って、個々の細胞は大きくなります。これは減った分の機能を補うためと考えられていますが、角膜の機能は、いづれにせよ角膜内皮の数がある程度ないと維持することができません。

【コンタクトレンズは角膜の老化を促進します】

コンタクトレンズは黒目(角膜上皮)に装着します。この場合の角膜内皮への酸素の供給は、コンタクトレンズ→角膜上皮→角膜内皮となり、ただでも酸欠になりやすい角膜上皮がさらに酸欠となります。コンタクトレンズの使用は年を取ると数が減少する角膜内皮の減少をさらに加速し、角膜の老化を促進することになります。コンタクトレンズ、特にハードコンタクトレンズの装着時間に制限がもうけてられている理由の一つは、角膜内皮の保護が目的です。でも、なかなか装着時間の制限は守られないのが現状です。

特に女性の場合は、装着時間を減らすために眼鏡との併用をすすめても、美容上の理由から、併用してもらうことができません。先にも述べましたが、角膜内皮は減少しても痛みがありません。また、減少が加速されても、角膜の透明性は当分維持されるので、角膜内皮の保護がおろそかになりがちです。

そして、角膜内皮障害は、目の痛み、視力障害などの自覚症状を伴わず進行して行きます。障害がある限界を越えると角膜浮腫という状態になり、角膜の透明性を維持できなくなり、視力低下、失明状態となります。角膜浮腫まで進むと治療方法は角膜移植しかありません。
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