高齢出産は何歳から? 合併症や出産リスクへの不安も……
妊娠・出産は喜ばしいものですが、高齢出産のリスクに不安を感じる女性は少なくありません
実は、高齢出産や高齢初産には、WHO(世界保健機関)や日本産婦人科学会が提唱している定義があり、その背景にははっきりとした理由があります。「高齢出産」の定義や予想されるリスク・合併症について解説します。
日本における「高齢出産」「高齢初産」の定義
■高齢出産の定義は厳密ではない?高齢出産は「大体35歳以上」とされていますが、実は厳密な定義はありません。ただ、「高齢初産」に対しては次のような明確な定義があります。
■日本産婦人科学会による高齢初産の定義
高齢初産は「35歳以上の初産婦」と定義されています。ただしコレは1993年以降のお話。それまでは実は「30歳以上の初産婦」でした。社会的に30歳以上の出産が増えたからということもありますが、いろいろな結果から実質的に35歳以上だと(特に初産)いろいろなリスクが高まることから変更されたようです。なお、世界産科婦人科連合(FIGO)は「初産では35歳以上、経産では40歳以上」と定義しています。
■超高齢出産とは
近年のトピックで、50代以降の閉経後の女性が出産することを指します。閉経後に妊娠・出産ができるのかと思われるかもしれませんが、過去に凍結しておいた自分の卵子や、他の人の卵子を使うことによって、技術的には可能になってきています(※ただし、日本では自分の卵子以外は原則認められていません。倫理的、哲学的に議論すべき、難しい問題も伴っています)。
高齢出産のリスク・考えられる合併症
高齢出産のリスクと考えられる主な合併症について挙げてみましょう。■染色体異常
あまり知られていないかもしれませんが、女性は体の中にすでに一生分の卵胞を持った状態で生まれてきます。そして当然、その卵は年齢とともに成熟し、さらには老化していくのです。卵の老化というのは、具体的には染色体の異常ということです。染色体異常は自然流産(20代では10%強といわれている流産の確率は、40代では30%以上になるという話もあります)や、先天異常の原因などになります。逆に自然流産の半分以上は染色体異常で起こるといわれています。
■妊娠中の合併症
年齢が高くなると自然と高血圧や糖尿病などの生活習慣病リスクがあがります。そしてこれらは妊娠中毒症の原因にもなります。ひどい中毒症の場合、胎盤の発達が悪く、赤ちゃんが栄養不足になってしまうことも考えられます。
■卵子の数の減少
余談ですが、加齢とともに卵の数自体が減ってきます。特に30代後半からは急激に減るので妊娠しにくくなるといわれています。
■分娩障害
出産に関してはもちろん個人差がありますが、高齢初産の場合は産道が硬く分娩が長びく傾向があるようです(特に35歳以上ではないですが、「遷延分娩」という分娩時間が長引く分娩の基準は、初産で30時間、経産婦で15時間です)。出産が長引くと本人がつらいのはもちろん、赤ちゃんが仮死状態になる頻度がちょっと高くなるのが問題です。あまりに長引けば帝王切開となります。ちなみに経産婦さんは1回産道が開いて柔らかくなっているので、時間がたっていても大丈夫なのですね。
■不妊治療による多胎
不妊治療を受けての高齢出産は多胎が多く、たとえばイギリスでは双子以上の出産が増加しました。ただ、多胎出産は低体重児、脳性麻痺などのリスクも高く、HFEA(Human Fertilisation and Embryology Authority イギリス受精胎生局)は母子の健康を考えて、使用する胚の数を原則として2つまでに制限するとしています。
高齢出産のメリット
まず、経済的に安定している場合が多いということが挙げられます。これは子どもを産み育てる場合の大きなポイントになるかもしれません。また、生まれてくる赤ちゃんにとって、待ち望まれて生まれ、ゆったりした気持ちで迎えられる環境はなによりも代えがたいものになるかもしれません。自分の人生のどのタイミングで妊娠・出産を迎えるかということは、医療が進む中で色々な選択肢が出てくると思います。メリット、デメリットを良く知って賢く選んで下さいね。高齢出産に関しては、「医師が解説!高齢出産のリミット、何歳まで産めるか?」もあわせてご覧下さい。
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