肥満・メタボリックシンドローム/肥満・メタボリックシンドロームの基礎知識

特定健診 お腹のサイズがアナタに警告!

特定健診が始まろうとしていますが、その大きな目的はメタボリック症候群をいかにして見つけ出すかということにもあります。その柱となるのが腹囲測定ですが、正確な判定ができるのでしょうか?

執筆者:吉國 友和

今年から「特定健診・特定保健指導」という制度が導入されます(以下、特定健診と表記します)。最大の特徴は、いかにしてメタボリック症候群を早期に発見するかということでもあり、その中で注目を集めているのは腹囲の測定(注意)ですが、まだ開始される前から論議をかもしています。

注意:腹囲測定の方法は、へその部分を中心に胴体をぐるっと一周してメジャーで長さを測ります。いわゆるウエストとは測る部分が異なりますので、ご注意ください。


まずは復習、メタボリック症候群とは?

一服
何もかも制限してしまうのはストレスになりますが、缶コーヒーやジュースには砂糖がたっぷり入っていることも……
メタボリック症候群について詳しくは昨年6月に作成しました記事「メタボリック症候群とは?」を確認していただきたいのですが、簡単におさらいすると腹囲が男性では85cm以上、女性では90cm以上であり、以下の3つのうち2つ以上を満たす場合に診断されるということでした(診断基準には異論もありますが、国内での一般的な基準としてまずは読みすすめてください)。
  • 血液検査で中性脂肪150mg/dl以上かつ・またはHDL(善玉コレステロール)40mg/dl未満
  • 収縮期血圧130mmHg以上かつ・または拡張期血圧85mmHg以上
  • 空腹時血糖値110mg/dl以上
ところが特定健診が始まる前から、腹囲を診断基準の1つにしていることに問題があるのではないかと言われ始めています。前述のガイドの記事でもすでに指摘していたのですが、正確な診断を行うためには腹囲でなく腹部CT検査を行うべき、という意見もあります。腹囲が男性で85cm以上、女性で90cm以上ということですが、この基準はどういった根拠があるのでしょう?


腹囲測定の根拠と矛盾

結論から言うと、腹囲は男性で85cm以上、女性では90cm以上(かつBMI25以上(※))あると、同じ箇所で腹部CT検査を行った場合の内臓脂肪量が、
  • 男女ともに100平方センチメートル以上あるであろう
という推測から成り立っています。メタボリック症候群の特徴は「下半身肥満」ですが、それを示す腹部内臓脂肪量が腹囲から推測される数値であったところに、更にプライバシー保護のため腹囲測定は自己申告でも良い、着衣の上からは測定値から1.5cmひく、といった曖昧な基準を示されてしまったところに問題があるのです。

(※)BMIとは、体重÷(身長(m)の二乗)×100です。
   身長170cm、体重60kgの人では、60÷(1.7×1.7)=20.76です。

腹囲は一日を通してもプラスマイナス1.5cm程度は変動があり、しかも特定健診に向けてトレーニングを積んだ医療従事者が測定したとしても、測るたびに誤差が生じるのを避けることは困難です。また、わざと息を吸ってお腹を引っ込めて測ればごまかせるのではないか、という方もいらっしゃるかもしれません。ですが、腹囲も含めて健康診断・メタボリック症候群の持つ意味を考えていただきたいのです。


次のページでは健康診断の結果について考えてみましょう。
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