退職するなら少なくとも月末の1日前に
退職日を設定するとき、キリがいいからということで月末にする人は少なくないようですが、健康保険と厚生年金保険の保険料のことを考えると、これはあまり得策ではありません。
健康保険や厚生年金保険の保険料は後払い方式となっているため、毎月の給料から天引きされている保険料は前月の分です。この保険料額の計算は、被保険者である期間の各月について1カ月単位で行われますが、退職などにより被保険者としての資格を喪失した日が属する月の保険料は徴収されません。ポイントは、資格喪失日は退職日の翌日となるということです。
たとえば毎月20日締めで25日に給与支払いを受けている人が8月31日に退職するとした場合、8月25日の給与からは7月分の保険料が徴収されますが、21日以降も引き続き月末まで勤務するので11日分の給与が残ります。8月31日に退職すれば資格喪失日は9月1日です。つまり、資格喪失日が属する月は9月で、9月分の保険料が徴収されることはありませんが、8月分の保険料については、残っている11日分の給与から徴収されることになるのです。
これに対して、8月30日以前に退職すれば資格喪失日は必ず8月中です。つまり資格喪失月は8月となり、21日以降の給与から保険料を徴収されることはないということになるわけです。
ただし、国民皆保険の原則に従って、たとえ短期間の間であっても、新しい勤務先に勤め初めて厚生年金保険と健康保険に加入するまでの間は、国民年金と何らかの健康保険(国民健康保険に加入するか、3ページ目で触れた任意継続被保険者制度を利用する方法がある)に加入する必要があることは申し添えておきます。
ところで、給与の締め日以降退職日までに在籍した日については、当然賃金が支給されますが、この賃金については、次の給与支払日になって支払うとする会社が多いようです。しかし、退職者が退職後に自分の所有に属するお金や品物の引き渡しを請求したときは、会社は7日以内にこれを本人に返却しなければならないという決まりがあるんです。最後の給料もこの金品に含まれますので、少しでも早くもらいたいときは、給料日前にでも支払うよう請求すればいいということになります。
住民税は転職先でも給与天引きに
社会人となって2年目以降の人は、給料から昨年の収入に対する住民税が天引きされているはずですが、6月から12月までの期間中に会社を退職すると、役所としては天引きの方法がとれなくなってしまうため、本人に直接、住民税の支払い通知書(請求書)を送りつけてきます。これは、退職後すぐに新しい会社に転職した場合でも、ずっと失業している場合でも同じです。
3カ月ごとにまとめて支払わなければならないため負担は結構大きく、うっかりすると、支払いに充てなければならないお金まで使ってしまって、期限までに払えないということにもなりかねません。
ところで、在職しながら転職活動を行って、退職する時点で次の勤務先が決まっている人なら、新しい勤務先で給与から天引きしてもらう方法があることをご存知でしょうか。
社員が退職した場合、会社は「給与所得者異動届出書」を作成して、その社員が居住する市区町村に提出することになります。これは、その年中に徴収することになっている住民税の総額、退職時までの徴収額、未徴収税額、新しい勤務先の名称、未徴収税額の徴収方法などを役所に報告するものです。