政治の超基本講座、今回は「司法権」が担う大きな仕事、「違憲審査制度」についてみていきます。法律などが憲法違反かどうかを審査することによって、何が守られることになるのでしょうか。

1ページ目 【違憲審査制度の意味とは?】
2ページ目  【2つのタイプがある違憲審査制度】
3ページ目 【日本は「司法消極主義」?】

違憲審査制度の「ほんとうの」目的とは?

法の支配
法によって公権力による人権侵害や独裁政治から国民を守ることが「法の支配」の原理。
憲法を国家の「最高法規」とみなし、これに反する全ての法律や命令、権力行為を無効とする……これが違憲審査というものです。こうして、憲法が他の法令よりも上位にあることを確保しているわけです。

しかし、それはあくまでも違憲審査制度を外見的に見た特徴にすぎません。違憲審査制の最大の目標は「法の支配」、つまり「正義や人権を守る法」によって権力を支配することにあるのです。

よく「立憲主義」といいますね。これは単に「憲法を作る」ということだけをいうわけではありません。実際、「立憲主義発祥の地」と呼ばれるイギリスには「イギリス憲法」というものはありません。

自由や人権を守り、政府は議会と、議会(下院)議員を代表者として選んだ国民に大きな責任を持つ……このような「法」は、イギリスでは文章としてではなく、さまざまな慣習、不文律的なきまりによって定められています(このような憲法を「不文憲法」ということもあります)。

つまり「立憲主義」とは、イギリスで歴史的に作られた「法」に基づいて「自由などの人権を守るための政治を行うこと」だと考えるべきなのですね。議会政治や民主政治は国民の利益のための政治ですから、立憲主義に基づいた政治形態といえます。その一方、憲法があれば立憲主義がある、と即断することはできません。

かつてプロイセンも憲法を制定しましたが、実際にはこのような国の憲法には君主の絶対権力が規定され、憲法の人権保障も有名無実化していました。このような政治は当然立憲主義ではないわけですね。

このような政治を「外見的(表面的)立憲主義」といい、ほんとうの「立憲主義」とは区別して考えます。現代の国際政治においても、憲法はあるものの、実際には独裁国家になっていて立憲主義が確立していない国は、少なくありません。

違憲審査制度は、立憲主義が形だけにならないように、民主的な憲法を最高の法として、非民主的な権力行為を排除するためのもの、といえるわけです。

「法の支配」から「憲法の支配」へ

憲法の支配
イギリスで生まれた「法の支配」の原理は、アメリカで「憲法の支配」という具体的なものに変わっていった。
イギリスという国はわりと「伝統」を重んじる国なので、抽象的な「法の支配」という概念が確立しました。だからイギリスでは立法段階から「法の支配」が重んじられ、違憲審査制度はありませんでした。

(イギリスには議会から独立した最高裁判所がないことも、違憲審査制度が確立しなかった1つの原因でした。しかし2009年から「憲法改革法」に基づき独立した最高裁判所が設置されることになっているので、違憲審査制度も慣習的に行われるようになるかもしれません。)

しかしイギリスでない他の国では、「法の支配」を「(民主的な)憲法の支配」と位置づけ、違憲審査制度を設けることによって、「法の支配」の具体化を行ってきました。アメリカをさきがけとして、多くの国々が、違憲審査制度を採用するようになったのです。

特にアメリカでは連邦最高裁判所の違憲審査権は強力で、しばしば「司法権の支配」と呼ばれることがあります。そのためアメリカ連邦最高裁判所の判事任命(大統領が行う)は、判事の任期がない(死ぬまで辞めなくていい)こともあり、大きな政治問題の1つになることがあります。