(記事掲載日/2008.6.22)

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公務員に専門性と政治的中立性を求めるしくみ

試験
公開採用試験で公務員を採用するのがメリットシステム。© Michael Flippo - Fotolia.com
メリットシステムとは「資格任用制」ともいわれる制度で、今日の先進各国の公務員制度の主流になっている制度です。

メリットシステムの第1の目的は専門性の確保です。そのため、公開採用試験を行い、専門性にすぐれた人物、専門家としての素質のある人物を採用します。

そしてもう1つの重要な目的が、政治的中立性の確保です。政党政治に公務員が翻弄されたり、利用されたりするのを防ぐためです。そのため人事行政については中立的な人事委員会(日本では人事院)を設けたり、公務員の政治活動を制限したりします。

このような制度はナポレオン時代のフランスに源流を求めることができるといわれており、フランス・ドイツでは比較的早期に発展したといわれています。

一方、イギリスでは政権党が代わるごとに大量の公務員が変わる「情実任用性(パトロネーゼ)」が長く続いていましたが、公務員の専門性や中立性が要求されるようになり、19世紀の中頃にメリットシステムに移りました。

アメリカでは、「スポイルズシステム(猟官制)」により、官職は政権党の獲得物とされ、公務員の任用は政党政治の動向に大きく左右されていました。しかし、やはりイギリスと同じような理由で見直しが行われ、19世紀の後期にメリットシステムを導入しました。

ただアメリカの場合、今でも大統領は連邦政府のポストのうち重要職である2000あまりを任命することができるようになっています。政権交代とともにたくさんの高級官僚がワシントンを去り、ほかの人が大量にやって来るくるのです。

日本のメリットシステム

日本の公務員の帰属意識
日本の公務員は省庁別に採用されるため、意識は国家よりも所属省庁に傾きやすいといわれている。
日本は1886年に帝国大学令を、そして翌年に官吏任用令を制定し、メリットシステムを導入しました。「旧帝大」はまさに上級公務員養成機関として、メリットシステム導入とセットで整備されたのでした。

日本のメリットシステムは、戦前から一貫して「閉鎖型任用制」といわれるしくみです。これはヨーロッパ諸国と基本的には同じで、終身雇用が大原則です。中途採用はほとんどありません。

そのため、中途採用が多く、即戦力を求める傾向の強いアメリカの「開放型任用制」と比べると、採用後の研修の重視、プロフェッショナルよりはゼネラリストを求める傾向が強いと言われています。

また日本の場合、戦前から一時期を除いて採用は各省庁別に行われています。人事院は採用試験のみを行い、採用自体にはほとんど携わっていません。

1つの省庁で終身雇用されることによって、国家公務員の意識は全体の国益ではなく、狭い「省益」へと向かうことになってしまい、それが省庁の縄張り意識、セクショナリズムを形成する1つの要因として批判される点です。

「国家公務員制度改革基本法」が2008年の通常国会で成立し、各省庁の幹部人事を一元管理する「内閣人事局」が内閣官房に設置されることになりました。しかし、すべての国家公務員を採用段階から一元管理し、特定省庁への帰属意識をなくすことが必要だという指摘もあります。



※参考書籍・サイト
『行政学』 西尾勝 1993 有斐閣
『行政学教科書[第2版]』 村松岐夫 2001 有斐閣
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