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今週は「圧力団体」についてです。「利益団体」「利益集団」ともいわれます。新聞などにはよく出てくる言葉ですが、どういう集団なのでしょう。そしてその意義や、日本での特徴とは?
圧力団体の存在意義
圧力団体は「議会制の補完機能」を持つとされる。 |
政党との違いでその形を浮き彫りにしていきましょう。
政党は(一応は)国家共通のことについて主義主張を展開し、議会において活動しようとします。
一方、圧力団体は団体固有の特殊な利益についての主張を、議会外から、議会や行政府などに行おうとします。ここに、政党との違い、圧力団体の性格をみてとることができるでしょう。
現代社会における国民の利益はたいへん幅広いものがあります。少数の政党では汲み取ることができません。これを汲み上げ、政治に反映させるのが圧力団体です。そういった意味で圧力団体は「議会制の補完」をしている、といわれています。
しかし、圧力団体は民主的な統制を受けているわけではなく、圧力団体と議会や官僚などが影で癒着し、民主政治の背後から政治をコントロールしようとすることもあります。これは、圧力団体の「負」の部分です。
アメリカの「ロビイング」
アメリカでは、圧力団体から雇われた「ロビイスト」たちによって圧力団体の主張を通そうとする活動、「ロビイング」がさかんです。元議員、元官僚、弁護士などの経歴を持つ彼らは、議会の議員や官僚たちに働きかけて、法案の成立または成立阻止をめざして活動をしているのです。
こうしたロビイング活動はともすれば密室政治に陥り、ロビイストと議員たちの癒着が生まれがちです。こうしたことから、アメリカでは1946年に「連邦ロビイング規制法」が生まれ、ロビイストの登録制、収支報告義務などを課しています。
アメリカでこうしたロビイングがさかんな理由として、政党の規律の弱さをあげることができます。アメリカの二大政党はめったに「党議拘束」などを議員にかけることはなく、議員は平気で他党の法案に賛成したり、自党の法案に反対したりします。
こうしたことから、アメリカの圧力団体は議会や個々の議員に精通したロビイストという専門家による活動が必要になってきたといわれています。
さらにアメリカでは近年「グラスルーツ・ロビイング」というものも盛んです。世論を盛り上げ、それをバックに議会や行政府に影響力を与えようとするものです。
また、国際政治の中心アメリカでは、他の国家もロビイストを雇い、ロビイング活動を行って自国の利益を追求しています。まさにロビイング大国といったところでしょう。
日本の圧力団体の特徴
一般にいわれる日本の圧力団体の特徴。 |
さらには、圧力団体から代表として政党の公認を得て国会議員を輩出することもしばしばあります。ロビイストがいない日本では、しばしば彼らがロビイストの代わりを務めることがあります。
また、圧力団体の全国組織が既存の集団を抱え込むところも日本の特徴だといわれています。本来親睦のために作られた地域の集団が、圧力団体の傘下に入ってしまうというものです。
したがって、圧力団体の下部集団では、あまり自発性がなく、圧力団体としての活動も活発ではない。選挙のときなど特別なときのみ動員され、上位組織のいう通りに行動する、ということが指摘されています。
もっとも、これらは日本だけの特徴ではなく、他国でもみられるということもいわれています。
また日本では地方六団体といわれる地方自治体の長や議会の組織が圧力団体として機能しているという特徴もあります。特に近年、彼らの発言力は増しているといえるでしょう。
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※参考資料
『新版 現代政治学小辞典』 阿部齋・内田満・高柳先男/編 1999 有斐閣
『政治過程論』 伊藤光利・田中愛治・真淵勝 2000 有斐閣