2ページ目 【両院協議会と衆議院再可決の手続き】
3ページ目 【50年行われていない衆議院再可決】
両院協議会を開いて成立した例
参議院で衆議院の送付法律案が否決・修正されたときの処理。1994年以外はすべて1940~50年代。 |
この一番最初のものは1948年、第3国会での国家行政組織法と刑事訴訟法改正についてのものでした(このときは参議院は否決ではなく修正)。衆議院本会議で参議院の修正案について不同意を議決し、その直後両院協議会を衆議院が開くことを議決し、しばらく休憩。
そしてその休憩中に両院協議会が開かれ、両法律案の成案ができたので、衆議院の本会議で一括して採決。可決され、参議院に送付。法律として成立しています。
特別多数決によって再可決した例
衆議院が再可決をして法律案を成立させたのは26件です。この一番古いものは刑法改正案です。1947年の第1国会でのもので、参議院が修正して戻してきた案を否決した後、再可決を望む動議が議員から出され、再可決をしています。参議院が60日以上たっても審議が終わらず、衆議院が否決したものと見なして再可決したものとしては国家公務員法の改正案についてがあります。まず「否決したものとみなす」ことを議決したのち、再可決動議をへて、再可決を行っています。
ちなみに再可決しようとしたものの再可決が成立しなかったのが1件あって、それは政府職員の新給与実施に関する法律案というものでした(1950年第7国会)。賛成194、反対100で3分の2には届かなかったのでした。
衆議院で再可決が行われた最後は、1957年5月19日の環境衛生関係営業運営適正化法案でした。参議院が修正した回付案に同意せず行ったものです。これ以降、50年にわたって再可決は行われていません。
その他の例
両院協議会を求める動議が否決されてしまった例が一件あります。1949年、第7国会での公共企業体労働関係法についてのもので、議長から両院協議会を求める動議が出されましたが、参議院の修正に同意する議員も多く、否決され、それで廃案になってしまっています。また、1951年第10国会において、食糧の政府買入数量の指示に関する法律案が参議院から修正されて戻ってきたときは、同意しない議決をしたものの、「別に御発議もありませんから、食糧の政府買入数量の指示に関する法律案は成立するに至りません。」(副議長の発言、議事録より引用)ということで、特別多数決も、両院協議会も開かず廃案ということになっています。
たびたび衆議院と参議院の不一致が問題になった初期国会
最初の頃の国会は、衆議院と参議院で異なる議決をすることが多く、再可決や両院協議会の開催などが結構行われています。当時の国会は、今のように衆議院と同じ政党が組織しているのではなく、結構無所属議員が多かったのです。彼らが作った会派「緑風会」は1953年まで2割の議席を占めていました。
彼らは参議院は「良識の府」だとする自負が強く、「衆議院の横暴」を止めるため、しばしば衆議院が送付してきた法案を否決、または修正してきました。そんなことがあったため、この時期、衆議院の再可決ということは結構ひんぱんに行われていたのでした。
50年間行われてこなかった再可決を福田政権はできるか
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つまり、参議院で政党勢力が拡大していき、無所属議員は極端に少なくなり、衆議院と参議院の政党構成があまり変わらなくなってきたのです。こうして、参議院は衆議院の「カーボンコピー」と呼ばれるようになり、衆議院で可決した法律案を参議院が否決するということはなくなりました。
1989年、参議院選挙で社会党が大勝、自民党が大敗して衆議院の与党と参議院では少数派だという「ねじれ国会」が生じました。しかし自民党は公明党や民社党といった野党を巧みにとりこみ、参議院で政府案が否決されるような事態を避けることに成功しています。
しかし、2007年参議院選挙で民主党が大勝し、ふたたび「ねじれ国会」が生まれました。民主党は自民党との対決姿勢を明確にしています。一方連立与党は2005年の衆院選で公明党とあわせて3分の2以上の議席をもっているので、新テロ特別措置法案など、衆議院で可決されたものが参議院で否決される可能性は高まっています。
そのとき、はたして自民党は50年ぶりの再可決に踏み込むことができるか。これがいま、注目されているのです。
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