今週の政治用語解説は「ポスト京都議定書」についてです。地球温暖化対策についての各国の数値目標を決めた「京都議定書」の「約束期間」がいよいよ来年に迫りました。国際社会はその期間後の対策について話し合い始めています。
京都議定書の「約束期間」
(EU15カ国とは中東欧諸国をのぞいたもの)出典:エネルギー・経済統計要覧2007年版 |
温室効果ガスの削減は、2008年から2012年の間の5年間で行われます。先進国全体で5.2%の温室効果ガス削減を行います。日本は6%の削減が義務づけられています。もっとも、削減量の基準値は「1990年」になっているので、実際には、日本は15%もの温室効果ガスの削減を行わなければなりません。
さて、この「約束期間」が2012年に終わった後、温暖化対策をどうするかという具体的なことは、実はまだ何も決まっていません。この、2013年以降のことを「ポスト京都議定書」といい、京都議定書に代わる新しい温暖化対策作りが、早急に求められているところなのです。
まだ6年ほどあるとはいえ、京都議定書も採択から発効まで8年かかったわけですから、今から準備しないと間に合わないだろう、ということです。
アメリカと地球温暖化問題
最大の温室効果ガス排出国であるアメリカは、2001年に京都議定書から「離脱」してしまいました。「ポスト京都議定書」体制においてもこのままアメリカの不参加が続くようなら、地球温暖化対策は実効性のあるものにはならないでしょう。アメリカが、京都議定書に反対した理由の1つは、国別に、5年間という短期間での削減義務量を割り当てたことです。ブッシュ政権は、これによる国内経済の悪化をおそれて、京都議定書からの脱退を決めました。
アメリカは、数値目標ではなく、政策達成目標をたてるべきだと主張しています。自動車の排ガス規制などを一定水準行うとか、そのような個別の政策達成目標を各国に課すべきだと主張しています。
また、5年間とか10年間という短期的な目標期間にも反対しています。日本が提唱する「2050年までに世界の温室効果ガス排出半減」という目標にすべきだとしています。
アメリカの主張の通りの対策だと、地球温暖化対策は間に合わない、とする人々も多くいます。しかし、最大排出国であるアメリカを地球温暖化対策の枠組みに戻さないと、「ポスト京都議定書」体制がうまくいかないことも確かです。
開発途上国と地球温暖化問題
CO2排出量の推移。出典:平成19年度環境統計集 |
主要な開発途上国は、温室効果ガスの排出削減義務を負ってしまうと、経済成長ができないと主張してきました。経済成長をするには、現状、温室効果ガスの削減は難しいからです。
しかし、中国やインド、ブラジルなど主要開発途上国の経済成長は著しいものがあります。このままいくと、近い将来、温室効果ガスの排出量はこれら開発途上国が過半数を占めると考えられています。このまま開発途上国になにも義務を負わせないのは、適当ではないでしょう。
こういった開発途上国について、いろいろな提案がなされています。1つは、一括して全ての国に削減義務を負わせたうえで、個々の国については、経済状況に応じて「特別な配慮」をするというもの。
もう1つは、GDPと排出削減義務量をセットにするというものです。経済成長にあわせて、排出削減義務も増えるというものです。
「ポスト京都議定書」体制への動き
さて、「ポスト京都議定書」体制への動きはどうなっているのでしょうか。2006年、ナイロビで開かれたCOP12(気候変動枠組条約締約国会議)で、2007年からの「ポスト京都議定書」体制への話し合いを行うことが決定されました。2007年12月にインドネシアのバリで開かれるCOP13で、このことがどのように話し合われるか、注目です。
なお、COP13からアメリカが復帰することが決定しています。
また、今年の国連総会では「ポスト京都議定書」に向けた首脳級のハイレベル会合が開かれ、またアメリカ主催の「主要排出国会議」も開かれるなど、動きは活発になっています。
待ったなしの地球温暖化問題ですが、しかしとりあえずは、アメリカと主要な開発途上国をいかに対策の輪にとりこんでいくか、が大きな課題となるでしょう。バリでの会議に注目したいところです。
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★おすすめINDEX 「地球環境問題」
※参考書籍・サイト
『環境統計集 平成19年版』 環境省総合環境政策局環境計画課/編 2007 日本統計協会
『地球温暖化問題の再検証』 澤昭裕・関総一郎/編著 2004 東洋経済新報社
『地球温暖化交渉の行方』 高村ゆかり・亀山康子/編著 2005 大学図書
読売新聞