今週の政治用語解説は「閣議・閣僚懇談会」についてです。安倍首相の入院で閣議が「閣僚懇談会」になったということですが、閣議とはそもそもいったいどういうものなのでしょう。
内閣の最終決定を行うのが閣議
閣議が行われる首相官邸。閣議は非公開で行われている。 |
また、閣議は多数決は行わず、全員の賛成による「全会一致制」をとっています。これはどの法律にも書いていない「慣習」です。
しかし、憲法で「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ」(第66条3項、下線はガイドによる)とあるため、その連帯性を維持するため全会一致制は必要と考えられています。
では反対をどうしても撤回しない閣僚がいたらどうするのでしょう。内閣総理大臣には閣僚をいつでも自由に罷免、つまりクビにする権利があるので(憲法第65条2項)、その閣僚をそうすれば、全会一致となるわけです。
ちなみに、閣議は非公開です。ニュース番組で放映されている「閣議」は、実は閣僚応接室での閣議前のだんらんの風景なのです。議事録も一切ありません。
閣議で決定すること
閣議にはかる案件は、重要なものから順に「閣議決定」、「閣議了解」、「閣議報告」となっています。「閣議決定」するものの一番大事なものは、やはり法律案や予算の国会提出です。その他にも、内閣が制定する法令である政令の制定や、天皇に行ってもらう国事行為を決定(正確にいうと「助言と承認」の決定)したりします。
各省の国務大臣だけの権限で決められるものの、一応内閣全員に了承をとるものを「閣議了解」といいます。「閣議報告」は、審議会の答申の報告などを内閣で共有するものです。
各省の事務次官など幹部人事権は各省の国務大臣が持っていますが、慣習的に「閣議了解」が行われることになっています。閣議了解をするわけですから、当然その前に省幹部と大臣、そして官邸の話し合いとおのおのの同意が必要になってきます。
小池前防衛大臣のときの一連の事務次官人事問題は、この手続を素通りして大臣が人事権を行使しようとしたことにも一因がありました。
閣議で決めることはほとんど決まっている?
さて、閣議は定例閣議が火曜日・金曜日に行われますが(他の日に臨時閣議が行われることも)、そこで決まることは結構多く、いちいち議論すると時間がかかってしまうといわれています。しかし、実際には定例閣議の前日、つまり月曜日と木曜日に「事務次官等会議」が行われています。各省次官と警察庁長官が、事務方(官僚出身)の官房副長官を議長にして会議を行い、閣議にはかる案件を決定しています。
そしてその案件が、官房長官によって読み上げられ、異議がなければ署名して「全会一致」が成立、というわけです。もっとも法律案については、事務次官等会議だけでなく内閣法制局の「審査」も受けなければなりません。
閣僚懇談会とは?
閣僚懇談会とは、閣僚が意見を述べあう場のことで、通常は閣議の後に行われます。何かを決定するものではありません。このようなスタイルになったのは実は古くはなく、1993年の細川護煕内閣からだといわれています。事務的な決定が多い閣議と、政策や内閣の方針などについて話し合う閣僚懇談会を別にしようということだったようです。
ただ、法的に閣僚懇談会を開く義務はなく、あくまでフリートークの場、ということです。時間も10分程度から数時間と、まちまちです。
首相が入院したら閣議はどうなる?
決済書類を持って官僚が閣僚たちのもとにまわって署名をして成立する「持ち回り閣議」もある。 |
実際、安倍首相が入院した後の定例閣議は中止され、閣僚懇談会が代わりに行われました。
その場合、あらかじめ指定された国務大臣が、内閣総理大臣代行として閣議を開くことができます(第9条)。通常は、閣議の実質の仕切り役である官房長官が指定されていることが多いです。
ただ、これはあくまで総理大臣が死亡や危篤状態、十数日も日本にいない場合の話。総理大臣が東京にいて、ベッドの上でも職務ができるような場合は、「持ち回り閣議」を開くことができます。
これは官邸の事務官が書類を閣僚のところに持っていって、署名をもらうというものです。本来集まる時間がない緊急の場合のことなのですが、首相が入院しているものの判断能力などはしっかりしている場合などにも、これを用いることができます。
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※参考書籍・サイト
『大臣』 菅直人 1998 岩波新書
『首相官邸』 江田憲司 龍崎孝 2001 文春文庫