2ページ目 【国家主席・国務院総理など中国政府の重要ポストと権限】
3ページ目 【中国共産党のシステムと民族自治区・特別行政区】
国家主席の地位と権限
国家主席は象徴的な国家元首であり、中国のリーダーは国家主席というよりも、共産党のリーダーとして指導力を発揮している。 |
実は、中国憲法は国家主席に大きな権限を与えていません。また、その権限の多くは儀礼的行為に限定されているのが特徴です。
中華人民共和国成立直後の国家主席は大きな権限を持っていました。しかしその後、文化大革命が起こり、共産党(毛沢東中心)と国家主席の対立から、国家主席は廃止させられていた経緯があります。
その後、トウ小平が実権を握るようになった1983年、国家主席制は復活します。しかし、トウ小平があくまで最高実力者でしたから、国家主席は象徴的な存在とされるようになったのです。
ただ、トウ小平死後の中国では、共産党のリーダーである総書記が国家主席を兼任するようになってきており、「中国では果たしてだれが一番偉いのか??」的なややこしさは解消されつつあります。
国家主席の被選挙権は45歳以上となっています。また、任期は5年で、2期までしか努められないことになっています。ひとりのカリスマによる長期政権を、今の中国は否定しているわけです。
首相=国務院総理の地位と権限
国務院は憲法で最高行政機関とされており、内閣とみなされています。そのリーダーは総理で、中国の首相といえば総理のことを指します。総理は現在、温家宝(おん・かほう、Wen Jiabao)が務めています。共産党最高幹部である政治局常務委員でもあります。
民主集中制の原則から、国務院は国家主席にではなく、全人代に責任を負います。もっとも、実際には国家主席の元でさまざまな政務を行っており、国家主席と共産党に実質的な責任を負っているといえます。
国務院には総理のほか、副総理、国務委員、各部部長、各委員会主任などが置かれています。国務委員は基本的に顧問的な存在です。部長や委員会主任が閣僚にあたります。たとえば外相は「外交部長」、国防相は「国防部長」というのが正式名称です。国務院の「閣僚」たちは全員共産党員で占められています。
国務院は全人代や全人代常務委員会に対し法案提出権をもつほか、行政法規の制定権を持ちます。日本では法律で定めるような重要なことがらが、中国では国務院制定の規則などで決まっています。
総理・副総理・国務委員の任期はやはり5年で、2期までとなっています。
中央軍事委員会と軍
軍の統率権は今も中国の指導者には欠かせない重要な権力のひとつとされる(写真:アメリカ国防総省サイトより)。 |
人民解放軍はもともと「共産党の軍」として創設されたものです。中華人民共和国創設後、解放軍が「党の軍」なのか「国軍」なのかあいまいな時期もありましたが、現在では共産党の指導を受けるものの、解放軍は国軍であると位置付けています。
このようなことから、共産党にも中央軍事委員会というものがあり、そのメンバーがほぼそのまま国家の中央軍事委員会と同じようなしくみになっています。人民解放軍の司令官たちも、ほとんどが党幹部である中央委員になっています。
かつてトウ小平は、国家のポストには一切つかず、中央軍事委員会主席として君臨、大きな力を握っていました。前の国家主席である江沢民も、それにならって国家主席を辞めた後(2003年)も中央軍事委員会主席の座にはいましたが、「院政」を狙っているとして批判的な声も多く、2005年に辞任しました。
軍事委員会主席には多選の制限がありません。今後、制限が憲法に付け加えられることになるのかどうかは1つの注目点です。
さて、その共産党の組織や、香港などの特別行政区、少数民族自治区、さらには共産党以外の政党までを、次ページで見ていきましょう。