2ページ目 【開発中心の援助から「人間の安全保障」へ】
3ページ目 【世界のODA体制と、現在のODAをめぐる情勢】
【世界のODA体制と、現在のODAをめぐる情勢】
DACとODA
赤は借款(貸付)全体、黄はLDC(後発開発途上国)向け、緑はLDC向け2国間援助における、それぞれのGEの値を示している(2000~02年平均)。日本のGE値は必ずしも低いとはいえない |
DACの設立とそのシステムの整備によって、それまでまちまちだった先進各国のODAもまとまりはじめ、1972年にはDACによってODAの定義というものも行われるようになりました。
DACが定義したODAの定義とは、このようなものです。
●政府または政府機関によって供与される資金
●開発途上国の経済開発・福祉向上に寄与する資金
●グラント・エレメント(GE)が25%以上であること
GEは援助条件がゆるやかかどうかを示す指標です。ただし、計算式は大変難しくなっています。基本的には全てが無償資金援助の場合はGE=100%、全てが商業ベースの貸付条件で貸し付けられる場合はGE=0%となります。
ODAすべてが無償援助である必要はありません。有償援助、つまり貸し付け(借款)にすることにより、援助された国が資金返済のためがんばり、結果経済発展を遂げることも多いのです。
世界銀行とODA
国連専門機関として開発援助にあたるIBRD=世界銀行(世銀)も、ODAの重要アクターです。ほかに、世銀グループと呼ばれるIDA(国際開発協会)、IFC(国際金融公社)などもODAの一端を担っています。世銀グループの役割は「多国間援助」の仲介を果たすことです。ODAは、国どうしが直接援助しあう「二国間援助」だけではありません。世銀に先進国が資金を拠出し、それをもとにして世銀が開発途上国に援助するという形のODAもあるのです。これが「多国間援助」といわれるものです。
このようなODAアクターとなる国際機関としては、世銀グループのほかにもアジア開発銀行(ADB)のような地域開発銀行、さきほどでてきたような国連開発計画(UNDP)や国連工業開発機関(UNIDO)など、さまざまなものがあります。
これら国際機関と日本との関わりについては、後編でもお話していきたいと思います。
国連とODA
国連でもまた、ODAについては話し合われてきました。1961年、当時のケネディ・アメリカ大統領の提案によって「国連開発の10年」が3度にわたって設けられ、ODAの枠をGNPの0.7%にすることなどが先進国に求められました(1970年代の「第2次国連開発の10年」から)。
そして2000年、国連ミレニアム・サミットが開催され、「ミレニアム開発目標(MDGs)」が採択されました。「人間の安全保障」の概念のもと、貧困や饑餓(きが)の撲滅、乳幼児死亡率の削減、感染症まん延の防止、環境破壊の防止などについて具体的な数値目標が示されました。
また、国連は多国間ODAの実施にも深く関わっています。国連機関である国連児童基金(UNICEF)や国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などさまざまな国連機関が、日本など先進諸国の拠出や援助を受け、さまざまな援助活動を行っています。
世界の流れに反して減少する日本ODA
世界の先進各国はODAを増やして「ミレニアム開発目標」を達成しようとしているが、唯一日本だけは…… |
しかし、日本のODAは、そうはなっていません。
先進各国の状況に反し、日本のODA予算は年々縮小しています。2007年度までにピーク時(97年)からおよそ38%減少した日本のODAは、今後さらに年4%ずつ減少していくとみられています。
原因のひとつは、日本の財政悪化にあります。多くの国債を発行しているなか、「援助どころではない」ということで、ODA予算は減額され、世論もこれを支持しているということがあります。
また、「日本のODAはまったく援助になっていない」という批判、さらには2002年の「ムネオ事件」をめぐって取りざたされた「ODA利権」などへの批判が、日本のODA減額に拍車をかけてきたところがあります。
しかし、国際的状況に反してODAを減らしていかなければならないほど日本のODAは必要ないものなのでしょうか。後編では、変わりつつある日本のODAの姿について、お話をしていきたいと思います。
[変わりつつあるODA基礎知識(後編)はこちらです]
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※「変わりつつあるODA基礎知識(前編)」についての参考書籍・資料はこちらをごらんください。