2ページ目 【左右の軸だけでは語れない、フランスの政党模様】
3ページ目 【2007年大統領選挙、有力候補と「キーワード」は?】
【2007年大統領選挙、有力候補と「キーワード」は?】
社会党は初の女性候補ロワイヤル氏擁立
今年のフランス大統領選は、社会党ロワイヤル候補・右派サルコジ候補の一騎討ちか?(左上・サルコジ内相、右下・ロワイヤル元環境相) |
そこで、社会党は初めての女性候補としてロワイヤル元環境相を擁立することに決めました。才色兼備の候補を立てて、いざ巻き返しというわけです。
今のところ、ロワイヤル・ブームがおこり、彼女はフランス初の女性大統領になりそうな勢いです。もっとも、それが選挙の日までもつかどうかはわかりません。
彼女は、社会党のなかでは「右寄り」な現実主義者として知られています。そのことが、伝統的な社会党支持者にどう移るかが一つの注目ポイントです。浮動票は獲得できても、肝心の支持者たちが離れていっては困ってしまいます。
しかし、同性愛結婚を認める発言をしたり、大臣時代は公立校でのコンドーム配付を実行するなど、その言動はどこか意欲的かつ挑発的。今年の大統領選挙は、当面彼女を中心に動いていくことは間違いなさそうです。
右派はサルコジ内相が有力
一方、与党UMPはサルコジ内相を候補に指名することが確実な情勢です。もっともサルコジ内相はシラク大統領らゴーリストとは、ちょっと距離をおいた感じの人物として知られています。日本嫌い発言をしたことがありますが、これは親日家として有名なシラク大統領をけん制した発言であると捉えられています。
一時は最有力候補だったサルコジ内相も、ロワイヤル・ブームによってその人気を落としてきています。また、シラク派による女性候補アリオマリ国防相の擁立の動きが、UMPにしこりを残していくでしょう。
大統領選はロワイヤル・サルコジ両氏の一騎討ちになる公算が高いといわれていますが、それでも第1回投票で過半数に達する候補はいないと思われています。サルコジ内相の人気が低迷するようだと、中道候補との連携にも影響がでてくるかもしれません。
大統領選のキーワードは「ルプチュール」
いずれにせよ、社会党は右派候補が、右派からはゴーリストから距離をおいた2人の候補が登場。あたかも、硬直したこれまでのフランス政治からの「ルプチュール(決別)」することが、大統領選において求められているかのようです。フランスはある意味硬直しています。官僚が支配する政界、失業率の高止り、地方分権の遅れ(1980年代まで、県知事は中央から派遣されていた)……。
このような硬直状況に反発する動きが、2002年のルペン旋風であり、2005年の移民暴動であり、そして昨年の大規模な学生運動だったりしたのです。
ロワイヤル・サルコジ両氏がこのような政治から「ルプチュール」できる方向性を国民に示していくことができるか。どちらが勝つにせよ、そのあたりがうまくいくかどうかが、今回のフランス大統領選での注目点であるような気がしています。
(参考)過去のフランス大統領選挙
3度の大統領選を闘った末にようやくその座を勝ち取った社会党・ミッテラン元大統領(写真:フランス共和国サイト) |
・1965年 ドゴール(右派ゴーリスト、44.7%、決戦55.2%) ミッテラン(社会党、31.7%、決戦44.8%)
・1969年 ポンピドゥー(右派中道、44.5%、決戦58.2%) ポエール(左派中道、23.3%、決戦41.8%)
・1974年 ミッテラン(社会党、43.3%、決戦49.2%) ジスカールデスタン(中道、32.6%、決戦50.8%)
・1981年 ミッテラン(社会党、25.9%、決戦51.8%) ジスカールデスタン(UDF、28.3%、決戦48.2%) シラク(右派ゴーリスト、18.0%)
・1988年 ミッテラン(社会党、34.1%、決戦54.0%) シラク(右派ゴーリスト、19.9%、決戦46.0%) バール(UDF、16.5%)
・1995年 ジョスパン(社会党、23.3%、決戦47.4%) シラク(右派ゴーリスト、20.8%、決戦52.6%) バラデュール(UDF、18.6%)
・2002年 シラク(右派ゴーリスト、19.9%、決戦82.2%) ルペン(FN、16.9%、決戦17.8%) ジョスパン(社会党、16.2%)
★こちらもチェック!「ヨーロッパの政治問題」
※「フランス政治の基礎知識2007」についての参考書籍・資料はこちらをごらんください。
▼こちらもご参照下さい。
大人のための教科書 政治の超基礎講座
●「政治の基礎知識・基礎用語」 政治の基礎的な知識はこちらでチェック!