文章:石原 敬子(All About「よくわかる経済」旧ガイド)
アメリカではオバマ大統領が就任して約1カ月。景気対策法案が基本的に合意に達し、約72兆円規模の景気対策がいよいよ実施されます。中でも、物議をかもしているのが「バイアメリカン」条項。日本の輸出産業の業績を左右する条項だけに、私たちもその内容を知っておきたいものです。<INDEX>
「バイアメリカン」とは(1P目)
保護貿易主義とは(1P目)
保護貿易によって、どうなる?(2P目)
金融危機深刻化後に、保護貿易が急増(3P目)
必要以上の保護主義は、世界経済を鈍化させる(3P目)
「バイアメリカン」とは
バイアメリカン条項の盛り込まれる景気対策では、日本の輸出産業は落胆? |
両院で異なる法案は、この記事執筆時2月12日現在、「国際協定順守義務との整合性を考慮する」という文言が付け加えられて基本的な合意に至り、成立が目前となっています。
国際協定として、世界貿易機関(WTO)ルールでは、保護貿易によって外国企業に大きな損害が出た場合、内外企業を差別しないことを原則とします。修正案で、国際協定を順守すると盛り込んだものの、アメリカをお得意様とする日本企業に、「バイアメリカン」条項が打撃となるのは必至です。
保護貿易主義とは
保護貿易主義は自由主義の対になる言葉で、貿易に関税をかけるなど壁を設けた取引の状態をいいます。関税をかける目的は、国内の産業を国際競争から守ることです。外国からの輸入品に関税を上乗せすれば、国内での輸入製品価格が高くなります。結果として、国内製品の販売シェアを保つことができるというわけです。
特に、国内製品の競争力が弱い場合に、輸入品に関税をかけて輸入を制限することもあります。また、ある産業を国内で成長させたい場合にも、同じ分野の輸入品に関税をかけることもあります。
このように、輸入品に対して関税というハンデを負わせ、国の政策で国内製品を保護することを、保護主義とか保護貿易主義といいます。
今回、アメリカでは、アメリカ国内の企業業績を回復させ、景気浮揚につなげたいことから、アメリカ製品のみを公共事業に使用するという保護主義を打ち出したのです。
ところで、国が保護貿易に走ると、貿易相手国、国内の消費者、国内企業にはどのような影響があるのでしょうか。次のページで見てみましょう。