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【「福祉国家スウェーデン」はこの先どうなる?】
スウェーデンの福祉水準はほんとうに高い
スウェーデンは世界に名だたる福祉国家であることには間違いない。しかし、全てがバラ色というわけでもない。 |
普通教育はいうにおよばず、大学も授業料だけなら無料です。医療費も失業手当も心配なし。年金は全国民同じシステム(ただ、そのシステムの中である程度選択ができる。日本のように厚生、国民年金などとわかれていない)。
生活困窮者だけでなく年金受給者にもふんだんな住宅手当が支給されますし、児童手当は子ども1人につき年額およそ20万円以上(3人目からは増額。日本は1人年額6万円)。
「財布の心配をしなくていい」それがスウェーデンだ、といいます。
しかし、それは反面「財布の中身にお金が貯まらない」しくみにもなっているのです。いわゆる「高福祉高負担」政策というものです。
「高福祉高負担」の高負担の内容
スウェーデンの税金は非常に重いのです。このくらい税金払えば、そりゃ高福祉になるだろうというくらいに。『スウェーデンハンドブック』(早稲田大学出版部)には、24万クローナ(約360万円)の収入があったとしたら、いったいいくらの負担が強いられるかが掲載されています。
これによると、まず所得税が55,900クローナ。ついで間接税が33,500クローナ。一般間接税(日本でいう消費税)はモノにもよりますが原則25%の税率です。さらに16,800クローナが社会保険料として徴集。
結果残るのは133,800クローナ。約200万円です。360万円の年収で、手取りが200万円。かなりもっていかれてます。
これはあくまでモデル・ケース。国民負担率は75%といいますから、実際にはもっと税金を引かれている人もいるはず。所得税を払う対象になってなくても、25%の消費税はイタい。食糧品のような生活必需品でも12%です。
結局、GDP(国内総生産)から税金にまわるお金は全体の50%超。それだけのコストをかけて、スウェーデンは高福祉を維持しているのです。
それでも、2002年すなわち前回の総選挙では、社会民主党が「高負担」を掲げて政権を維持できたのですから、驚きです。
決してバラ色ではないスウェーデンの現状
日本はスウェーデンから「明」の部分だけでなく、「影」の部分も学ぶ必要がある。 |
スウェーデンでさえも、お金をいくらもかけても、なかなか解決しない問題が山積している。そういう中で、肝心の経済が悪化し(特に雇用情勢と財政)、人々の勤労意欲が失われている……ということがいわれています。
そんななかでの今回の政権交代劇。ブルジョワ・ブロックの次期政権は、高福祉は維持しつつ、減税などを行い、同時に悪化した財政や雇用を立て直すとしています。
当面「高福祉高負担」の見直しが急速に進むことはなさそうですが、ブルジョワ・ブロックの政権が長期化すれば、そのような議論が起きるかもしれません。経済のグローバル化が進む中、この政策が人件費の高どまりを招いていると考えるスウェーデン財界は、ブルジョワ・ブロックの支持基盤です。
中道色を強めて支持を拡大したブルジョワ・ブロック
新首相にはブルジョワ・ブロック第1党穏健統一党の党首ラインフェルト氏が就任することが確実です。高負担高福祉政策への反発もさることながら、ブルジョワ・ブロックが巧みに中道色を強め、左派への信頼が厚い有権者の支持を取り込んでいったともいわれています。この中道色が政権運営でも生かされれば、今度はなかなか政権交代を許さないかもしれません。
ちなみですが、スウェーデン議会は首相指名選挙を行いません。議長が首相候補者を指名し、それを議会の投票にかけます。過半数が反対しなければいいので、1978年には、賛成39、反対66、棄権215で超少数与党政権が誕生したこともあります。
※「スウェーデン政治の基礎知識2006」についての参考書籍・資料はこちらをごらんください。
▼こちらもご参照下さい。
大人のための教科書 政治の超基礎講座
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