2ページ目 【スウェーデン・モデルといわれる独特の労使関係】
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【スウェーデン・モデルといわれる独特の労使関係】
スウェーデン・モデルとは
大きな力を持った労働組合と左派政権のもと、労働組合は台頭な立場で「労使協調」を行うことができ、経済は安定した。 |
そしてこの数字は、労働組合の政治での発言力の大きさにも反映されています。
社会民主党が政権を獲得して以来、労働組合は労働者・使用者(企業)台頭の協調関係が作られていき、労使関係は非常に安定しました。
特に1938年、労働組合と使用者団体で結ばれた労働協約「サルチオバ-デン協約」はスウェーデンの現代史において重要な意味を持っています。これによって労使間の協議体制がほぼ制度化されたのです。
そしてこの体制は、社会民主党政権のもとでスウェーデンを福祉国家にする一つの大きな力となりました。労働組合は左派政権と緊密な関係を築きましたが、それが1950年代、社会民主党が付加年金と呼ばれる大きな年金システムの導入など福祉国家政策を押し進めていく原動力となったのです。
このような労働組合と企業・政府との緊密な協調体制を「スウェーデン・モデル」または「スウェーデン・ネオ・コーポラティズム」といいます。
スウェーデン・モデルの限界
しかし、1970年代からこのモデルは徐々に限界を見せ始めてきました。1950年代から60年代は、スウェーデン経済が好調だった時期です。いや、たいていの資本主義国はこの時代好調な経済を保っていました。日本の高度成長もこのころです。
しかし1970年代、特にオイルショックによってスウェーデンもまた不況に陥りました。これにより、企業は国内労働者との協調よりも、生き残りのため海外の安い労働力を使用することを選ぶようになり、国内の雇用情勢は悪化。
そして社会民主党長期政権の中断、ブルジョワ・ブロック政党の政権誕生。政府と労働組合の緊密な関係は途絶えてしまいます。
一方、労働組合が分裂したいったことも、労働組合の力が強い「スウェーデン・モデル」の崩壊につながったといいます。分裂と対立は労働者の団結をしだいに低下させていったからです。
とはいえ、今でもなお多くの加入者数をほこる労働組合。「崩壊した」といっても、労働組合と国家との交渉はいまでも続いています。労働組合の大きな力というのが、あまり日本では語られないスウェ-デン政治における特徴ということはいまでもいえます。
スウェーデンで力を持つ労働組合ナショナルセンター
さて、労働組合のナショナルセンター(全国組織)がどんなものかもみていきましょう。LOがもっとも古くからあるナショナルセンターです。ブルーカラー労働者が中心といわれており、LO傘下の労働組合員数は100万人以上、人口の9人に1人ほどとなってしまいます。
LOは昔から社会民主党の福祉国家政策を支持しており、社会民主党の大きな支持基盤の1つです。
2002年総選挙はスウェーデン経済が悪化していたときに行われましたが、このとき社会民主党政権はかろうじて政権を維持。これに貢献したのもLOだといわれています。
TCOも規模としてはLOに匹敵します。違いは、大卒ホワイトカラー労働者を中心にしているという点です。社会民主党との連携は弱く、むしろ離れていっているのが現状のようです。
SACO/SRはさらに高学歴のホワイトカラーを集めた組合によるナショナルセンターです。50万人ほどの勢力といわれます。高学歴でも8割くらいが労働組合に加入する、というところに日本との違いを感じさせますね。
スウェーデンの悪化する雇用情勢と政権交代との関連
経済のグローバル化・EU化によってスウェーデンの一国労使協調主義は崩れつつある。 |
かつて2%を維持してきた失業率は、90年代には一時8%を超えてしまいます。現在も5%弱の高い水準のまま、劇的に下がることはなさそうです。
これに呼応して、社会民主党の支持率もじわじわと低下。1990年代は政権を守った社会民主党ですが、とうとう今年(2006年)の選挙で、政権を3たび手放すことになりました。
★次ページでは、おなじみスウェーデンの福祉国家政策とその問題点についてお話していきます。