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日本の外交、やっぱり「三流」?(2ページ目)

「経済一流、外交三流」といわれる日本の外交。たしかにそのせいか、日本の国際的発言権はなんだか弱い気がします。なぜ、日本の外交力は弱いのでしょうか。具体的エピソードなどをもとに検証します。

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【「戦略の欠如」これは日本の国民性なのか?】
2ページ目 【情報収集能力で大きく劣る日本の外交当局と指導者たち】
3ページ目 【「使えない軍事力」……日本外交、弱腰の原点?】

【情報収集能力で大きく劣る日本の外交当局と指導者たち】

湾岸戦争は情報戦での敗北

湾岸戦争
湾岸戦争のとき日本が行った情報収集、それは安保理会議室の前に待機することだった……に本当局の情報力不足は否めない
湾岸戦争は同時に情報戦での敗北でもありました。

冷戦構造から抜け出すことに鈍感だった日本は、情報をアメリカに依存していました。しかし1990年代、国際政治の中心は明らかに国連でした。国連の機能マヒが冷戦終結によって解けたからです。

(今のアメリカ・ブッシュ政権の国連軽視は、ある意味90年代の反動、国連権威が強くなりすぎたことへの超大国としての反動なのでしょう。しかしイラク戦争で、日本はそのことを読み切れていませんでした)

日本は、国連安保理の非常任理事国には何回もなっていましたが、国連を中心とした外交、そして情報を得るルートをまったく持っていませんでした。えっ、と思うかもしれませんが事実です。

実際、湾岸戦争の時に安保理の議席を持っていなかった日本は、全く情報が得られず、外交官スタッフは連日開かれる安保理の会議室のドアの前で待機し、終わってでてきた各国代表から内容を聞いて、ことの推移を知るしかできませんでした(『国連安保理と日本』R.ドリフテ)。

日本がしっかりした情報、フランスもソ連も多国籍軍に参加するなどという情報をしっかりつかんでおけば、そして戦略性のある指導者がいれば、日本は130億ドルもの大金を小出しに使い、まったく注目されなかったということはなかったかもしれません。

(ちなみに、そのときの首相は海部俊樹氏です。彼の資質を疑うわけではありませんが、「とにかく首相に『させられた』」彼が、たとえ戦略を持っていてもそれを実行する権力がなかったことは明らかでしょう。いわんや、正確な情報が彼のもとに入ってきていたかも疑問です)

「ショー・ザ・フラッグ」の迷走

あの「9・11」から4日後、アメリカ国務相で柳井俊二大使とアーミテージ国務副長官(いずれも当時)の会談がもたれました。ここで、アーミテージ氏が「ショー・ザ・フラッグ」、つまり軍隊の旗を見せろ=自衛隊を派遣しろ、と迫ったとされています。

『9・11と日本外交』(講談社現代新書)の著者、久江雅彦氏は、この会談の内容を文書をもとに追い、この会談で「ショー・ザ・フラッグ」なる言葉はまったく出ていなかったことを指摘しています。

この言葉は、外務省の高官が政府首脳たち(最初は当時の安倍晋三官房副長官だったということですが)を動かすために、「アメリカの空気を伝えるための」言葉だった、と久江氏は指摘しています。それだけ、アメリカの日本に対する要求には切迫感と日本指導者(当時は小泉首相と田中外相でしたが)との間の温度差が大きかったのでしょう。

この年、小泉首相はブッシュ大統領と山荘にて親密な首脳会談をしたというのに、まるで情報の共有ができていなかったわけです。ともあれ、これを受けてようやく日本は支援策をまとめるのです。

しかしそれはインド洋で給油をするという、何とも地味なものでした。

テロの翌日、小泉首相が「われわれも不況だが、ここは100億ドルくらい『友人』のためにどかっと出す」とか言えば、インパクトは違ったかもしれません。

……ちなみに翌年、アメリカが感謝の意味で作った貢献国リストに、日本は含まれていませんでした。抗議によって改訂されましたが。危うく湾岸の二の舞いになるところでした。それほどの存在感だったということでしょうか。

情報収集に重きを置かない外務省人事

日本の外務省人事政策
日本の外務省はスペシャリストの養成を怠り、外交官をいろんな地域にたらい回しにしてきた。情報力の弱さの一因だ
永田町と選挙区だけの交流関係しか持とうとしない政治家も政治家ですが、外務省も外務省です。外務省の体制は、まったく情報収集を軽視しているとしか言いようがありません。

外交官の赴任先は、たいてい2年ごとに変わっていきます。短いですが、移る場所も地域もまったく違う。アジアからヨーロッパなどへと。その地域のスペシャリストを育てようというつもりがない。

アメリカのライス国務長官は、ロシア政治のエキスパートとして有名です。ロシアが復活してきた今、彼女が政権にいる意味は大きいものがあるでしょう。日本にはそのような人がいませんし、育つはずもないのです。

日本の外務省は、ある外交官を、彼・彼女がまったく言葉がわからないところに赴任させることにもまったく疑問を感じないようです。通訳がいればこと足りると。しかし、それでは大事な情報、「空気」が読めません。

アラブ諸国というのは70年代から日本にとって重要な国となっていますが、当然のようにアラビア語をはなせる外交官はほとんどいません。公の場で有力者のアラビア語の演説をちんぷんかんぶんのまま聞かされ、あとで内容をアラビア語がわかるイギリス外交官などにお願いして教えてもらう、ということもあるようです(『アラビスト外交官の中東回想録』片倉邦雄著)。

同盟国アメリカの情報も得ようとしない?

2002年9月、あの電撃的なピョンヤンでの小泉-キム会談で拉致問題をキム・イルソン総書記が認めたあとの10月、アメリカのケリー国務次官補は北朝鮮との協議で北が核開発を行っていることを把握していると暴露、北朝鮮も開き直り認めてしまいました。

以後、核問題をめぐって北朝鮮情勢は膠着し、拉致問題の解決のメドは未だについていません。

日本は、アメリカがこのような行動を取ることを察知していなかったのでしょうか?おそらくしていなかったのでしょう。

もし知っていたなら、「拉致問題をすみやかに片付けるので、ちょっと時間を欲しい」とアメリカに言えたはずです。しかしその節はない。もしケリー次官補が暴露することを知っていて、それを阻止できたら、見返りを求めて焦っていた北朝鮮に対し、日本は強気に交渉を進められたかもしれません。

ちなみに、韓国語(朝鮮語)がネイティヴレベルの外交官はどれだけいるのでしょうか。小泉-キム会談にはそのような人は同行しなかったようですが……公式な通訳は、ただむこうが言うことを伝えるだけで、「行間や表情を読んで」首相に教える、なんてことはしませんからね。

次ページでは、軍事力と外交、そして日本の「軍事力」について見ていきます。
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