大人のための政治基礎講座、国会シリーズ今回は「国会対策委員会」についてです。日本では、この国会対策委員会を通じた国会運営が基本になっています。この運営方法と、その問題点を見ていきたいと思います。
1ページ目 【政党の国会運営戦略の中核となる重要機関「国会対策委員会」】
2ページ目 【議院運営委員会は「出先機関」、本国は「国会対策委員会」】
3ページ目 【不透明な日本の「国対政治」の内容、そしてこれからの展望は?】
【政党の国会運営戦略の中核となる重要機関「国会対策委員会」】
国会対策委員会≠国会の委員会
現在では国会に議席を持つ政党のほとんどが国対委員会を持ち、国対委員会どうしの交渉により国会運営が行われている。 |
国会対策委員会というのは、与党から野党まで、国会に議席を持つ各政党が、国会対策のために設けている、政党内の委員会です。ややこしいですね。
この委員長が国会対策委員長(国対委員長)というわけです。
日本では、国会の議事運営などについては、この国対委員会の間の交渉(重要局面では各政党の国対委員長会談)で決定することが、「常識」となっています。
国対委員長は基本的にはどの政党でも「党三役(幹事長・政調会長・総務会長など)」よりも下位ポストになっていますが、国会運営、そして運営に関する各党との交渉の責任者として、「党三役」に匹敵する重要な役割を果たしています。
自分の政党内部の国会運営戦略も調整する
最終的な党の意思決定機関は総務会だが、実際には国対委員会の意向が重視されることも多い |
たとえば、自民党の場合、党として法案提出をする場合、あるいは内閣が提出しようとする法案に賛成する場合、その可否を決定するのは自民党の通常議決機関である総務会、となっています。
しかし、往々にして国対委員会がダメだしをすることがあります。「今の国会の状況では通りそうもない」「状況を見て、提出時期を伸ばした方がいいのではないか」「他党との交渉のメドがつくまで待ってほしい」……
こんな感じで、自民党や内閣が法案提出をしばし控える、ということはたびたびあるといわれています。
国会議員の所属する委員会を決めるのも国対委員会
国会戦略を練るのが国対委員会ですから、誰をどの委員会に配置するか、これを決定するのも国対委員会の重要な役割です。まず、議員が所属したい委員会についての希望を出します。自民党の場合、それを派閥が取りまとめ、国対委員会に提示していたようですが、派閥の力が弱まっている今、そうしたことは少なくなっているようです(現に無派閥議員が80人以上いますからね)。
ただ、与野党問わず、国会議員が希望する委員会は、どうしても偏るようです。一番人気はなんといっても予算委員会です。NHKでも何回も生中継され、その日の夕方のTVでも大きく扱われることのある、花形中の花形委員会です。
こうしたことがあるため、国対委員会が人選し、だれが予算委員会になるべきか、決めなければならないわけですね。こうした人選がはまるケースもあれば、逆効果を招いてしまうこともあるわけで(というか、民主党はまさにそうなってしまったわけで)、国対委員会、とりわけ国対委員長の責任は重大です。
ちなみに他の人気委員会は、経済産業委員会や国土交通委員会。なんとなく、利権のにおい漂うところです……。もっとも、国土交通委員会は強度偽装問題追及のおかげでなんだかクリーンなイメージになっていますが。
また、文部科学委員会という地味な委員会も秘かに人気のようです。私は教育に熱心なのです、クリーンな人間です、ということをアピールする一種の選挙対策、といってはいいすぎでしょうか。
ちなみにこんな感じで俗にいう「文教族」議員として図らずも首相になったのが、海部俊樹・森喜朗の両氏といわれています。自民党が危機に陥ったときには、無難な文教族、クリーンなイメージの濃い文教族、といったところなのでしょうか。
質問事項チェックや「党議拘束」周知徹底も国対委員会の仕事
国会戦略管理のため、ほかにも所属議員に対するさまざまな業務を行うのが国対委員会だ |
ただ、たくさんの委員会がありますから、すべてが細かくチェックされているようではないようです。しかし、本会議や予算委員会といった注目の場での質問は、国対委員会がチェックをしているようです。
また、本会議で法案の議決を行う前、議員が集められ、国対委員会が自分たちの党の姿勢(賛成・反対)を説明し、大きな異議がなければ、そこで国会議員に最終的な党議拘束(党の決定に従う義務を負うこと)がかけられたとみなされます。
そういった意味で、党議拘束の周知徹底を行うのも国対委員会の大きな仕事の一つ、となっています。