文章:石原 敬子(All About「よくわかる経済」旧ガイド)
以前は、オルタナティブ投資といえば機関投資家や年金基金の運用手法の一つでしたが、最近では、小口化されたり投資信託の運用に使われるなど、個人投資家の間にも広まってきています。この「オルタナティブ投資」とは、いったいどういうものなのでしょうか。<INDEX>
オルタナティブ投資とは(1P目)
オルタナティブは大口の投資家向けだった(1P目)
資源価格の高騰でオルタナティブが注目(2P目)
相場の上下を問わず利益を追求するオルタナティブ(2P目)
オルタナティブ投資の本当のメリット(3P目)
オルタナティブに向いているのは、こんな投資家(3P目)
オルタナティブ投資とは
不動産は従来からなじみのある、オルタナティブ投資の代表格 |
オルタナティブ投資の範囲は、金融商品の発展によって変化しています。そもそも「伝統的な投資の代わり」という意味なので、「伝統的な投資」が何なのかによって、捉えられるオルタナティブ投資の範囲が変わってきます。
金融の手法に関して世界をリードするアメリカですら、30年程度前の投資の中心はアメリカ国内株式への投資でした。その当時は、新興国への投資や格付けの低い債券への投資でさえも、伝統的な投資でないという意味でオルタナティブといわれていました。
現在では、一般的に、金や原油などの商品への投資や、先物・オプションなどの金融派生商品、REITなども含めた不動産への投資、ヘッジファンド、買収ファンドや再生ファンドなどのプライベートエクイティなどがオルタナティブ投資の対象とされています。
オルタナティブは大口の投資家向けだった
オルタナティブ投資は、従来、機関投資家による年金基金などの運用や、特定のお金持ちの資産運用の手段の1つでした。市場の変動で資産価値が減少しては困る資金のための運用手法として、利用されていたのです。これらの資金は、一般に広く公募されるのではなく、私募で集められます。「私募」とは「公募」に対する言葉で、ヘッジファンドやプライベートエクイティファンドの募集などは、ほとんどが私募です。「公に」ではなく、50人未満という少人数の投資家に対して「私的に」資金を募集して運用されます。そのために、その運用手法や投資対象などの情報は実際の投資家のみに知らせればよく、一般に公開する必要がありません。したがって、広告もないのが普通で、ましてや運用状況は投資家以外に報告する必要もありません。
通常、投資商品に対する規制は広く一般の投資家を対象に保護するためにあるので、私的に募集された商品は投資手法の規制を受けることがなく、自由な投資スタイルで運用されます。具体的には、一般の投資信託では投資できない手法を用いたり、デリバティブ(金融派生商品)を多用したり、バミューダやケイマンなどタックスヘイブン(租税回避地)で運用して課税コストを抑えるなどの手法が採られています。
では、なぜ今、オルタナティブ投資が注目されてきたのでしょうか。その背景は、次のページで。