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「女系天皇問題」Q&Aによる基礎知識

「有識者会議」のあとも賛否が分かれている「女系天皇問題」。でも、ややこしくてよく解らない、または判断材料が……という方もいらっしゃるかも。というわけで簡単に一問一答方式で解説してみました。

執筆者:辻 雅之

(2006.01.10)

女系天皇を認める、認めないといった論議が盛んになっています。しかし、ちょっとややこしいとか、疑問を持つ人も多いかも知れません。そこで今回は「女系問題基礎知識」を一問一答形式で解説してみましょう。

1ページ目 【「女系天皇」と「女性天皇」「女帝」は異なるもの】
2ページ目 【女系天皇を認めないために女性天皇を認めないのは憲法違反?】
3ページ目 【日本が敗戦した「1945年8月」に事実上の「革命」が起きた?】

【「女系天皇」と「女性天皇」「女帝」は異なるもの】

「女性天皇」と「女系天皇」は違うのですか?

違います。

女性天皇とは文字通り女性の天皇で、推古天皇・皇極天皇・斉明天皇・持統天皇・元明天皇・元正天皇・孝謙天皇・称徳天皇・明正天皇・後桜町天皇が今までに存在します。

ちなみに、皇極天皇と斉明天皇、孝謙天皇と称徳天皇は同一人物です。2回天皇になっているため、天皇としてのおくり名が2つあるのです。これを重祚(ちょうそ)といいます。

ですから女性天皇、いわゆる女帝は10代8人存在したことになります。

一方女系天皇とは、母が天皇であることを主な根拠として即位する天皇の事を指します。よって、男性の女系天皇が誕生する可能性もあります。

「女系天皇」は今まで存在していないのですか?

皇室家系図
3人の女性天皇の子である天皇とその家系図。赤色が女性天皇。みんな男系天皇の地を引いている。
今のところの歴史研究が正しければ、存在していません。

まず、上であげた女性天皇はすべて男性天皇または男系男子皇族の子です(推古:欽明天皇、皇極(斉明):敏達天皇と欽明天皇の孫、持統・元明:天智天皇、孝謙(称徳):聖武天皇、明正:後水尾天皇、後桜町:桜町天皇のそれぞれ子。元正天皇は天武天皇の子である草壁皇子の子、文武天皇の実妹。)

女帝の子である天皇は、天智天皇、天武天皇、文武天皇しかいないとされています。

しかし、天智天皇と天武天皇の母・皇極(斉明)天皇は舒明天皇の皇后でもありましたから、父親が天皇であるということで男系天皇です。

また、文武天皇の母・元明天皇は天武天皇とその皇后だった持統天皇の皇子で早世した草壁皇子の妃でした。文武天皇もまた、父が皇族であるということから即位した男系天皇です。

もし愛子さまが天皇になったら、女系天皇なのですか?

愛子さまが天皇になった場合、愛子さまは男系天皇になります。なぜなら父である皇太子殿下の子として即位するからです。

しかし、愛子さまの子が天皇になった場合、おそらく女系天皇になるでしょう。なぜなら現在皇族は非常に少なく、愛子さまと結婚される皇族はほぼいないと予想されるからです。

そのため、愛子さまの子が天皇になった場合は、母が天皇であるということになるので、女系天皇になります。

もっとも、現在の皇室典範(皇室の基本法)では女子の皇位継承を認めていません。

なぜ、女系天皇に反対する声があるのですか?

いろいろな理由があります。伝統を守るため、先例がないため、などなどです。

しかし、最も説得力のあるであろう理由は、明治時代に大日本帝国憲法や(旧)皇室典範を制定する際大きく尽力した、井上毅(こわし)の主張に見出すことができると思われます。

そのまま引用すると難しいので、今の言葉で簡単に彼の主張を要約します。

「女性天皇の皇子は女性天皇の夫の名字を継ぐことになる。ということは、天皇家じたいがこれまでの家からその夫の家へと変更されることになる。古代から絶えてこなかった現在の天皇家の血筋がいとも容易に他の血筋に変更されることはおかしい。」

女系天皇誕生それは、もはや古代から連綿と受け継がれてきた天皇家ではない、新しい天皇家を作ることになってしまう。それはよくないのではないか、ということです。

他の君主制をとっている国ではどうなのですか?

イギリス王家家系図
チャールズ皇太子以降は女系の国王になるが、デンマーク・旧ギリシャ王室の血統を引くだけにあまり違和感がないのかもしれない。
厳密に言うと、女系の君主は存在します。特にヨーロッパには多く存在しています。

実際、イギリスのチャールズ皇太子はエリザベス女王の子ですから、誕生すれば女系国王となり、「王家が変わる」ことになります。

ただ、ヨーロッパには日本と違う特殊な事情があります。

ヨーロッパには昔、もっとたくさんの王家や皇室、大公とよばれた諸侯家たちが存在していました。そのため、ある国の女王とある国の王子が結婚して出来た子が国王になる、ということは、ままありました。

これは、その国から厳密に見ると女系国王なのですが、父もよその国とはいえ同じヨーロッパの王族だったりするわけで、国民も納得して受け入れていたところがあります。

そのため、今はそのようなことがなくなっても、女系君主を受け入れる要素が培われていたといえます。その点が日本との差といえるでしょう。

女系天皇が認められないのは今の憲法では許されないのでは?

それについては、次のページでみていくことにしましょう。
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