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イギリス自由民主党に注目!

イギリスは保守=労働の二大政党制……とはよくいわれるものですが、今、第3党である自由民主党が勢力を拡大しています。彼らからメールも頂きましたので紹介します。(写真はケネディ党首/英国自由民主党提供)

執筆者:辻 雅之

(2005.05.02)

今月5日にイギリスで総選挙が行われます。イラク戦争問題で支持が揺れているといわれるブレア労働党ですが、はたして労働党初の2期連続政権防衛はなるのか? そして注目したい、二大政党以外の政党たち。彼らが今、力を伸ばしているのです。

1ページ目 【それではまず、イギリス議会政治の基礎知識から】
2ページ目 【イギリス政党政治も実は波乱万丈だった】
3ページ目 【「二大政党制」イギリスの第3・第4政党とは?】

【それではまず、イギリス議会政治の基礎知識から】

「立憲君主制」「議院内閣制」のさきがけ、イギリス

まずは、イギリス政治の基本的なことがらについておさえておきましょう。

イギリスは、いわゆる立憲君主国のはしりです。つまり、君主=国王はいるけれども、それは象徴的な存在で、実際には議会から選出された首相などから構成される内閣が行政を担うという、日本を含め西欧の君主国では今では当たり前の制度の、先駆けをつくったのがイギリスです。

それを表す言葉として有名なのが、「国王は君臨すれども統治せず」というものですね。

また、イギリスは議院内閣制の発祥地でもあります。議院内閣制、これも日本同様、多くの国で採用されているもので、内閣は議会の信任のもとに存在できる、という制度です。

つまり、議会(日本の場合は衆議院)から不信任をつきつけられた内閣は、総辞職しなければならないのですね。

ただ、対抗手段として議会を解散することができます。国民の意思を改めて問い直し、再び議会の信任を得ようとすることが、議院内閣制における内閣にはできるのですね。

重要な政治システムが法律的規定ではなく「慣習」

ただ、これらの原則は、イギリスでは「政治的慣習」なのです。これが、他の国と違う、ユニークなところです。

たとえば、「君臨すれども統治せず」などという言葉が法律化されたものはありません。また、議院内閣制のシステムも、日本ではしっかり憲法で規定されていますが、イギリスのそれは、18世紀の宰相・ウォルポールが確立した、やはり慣習です。

また、その信任は上院のものではなく、主として下院のものであること、そして下院の第一党の党首が首相になること、これらも「慣習」ですね。

このような「政治的慣習」によって政治が動いているのが、イギリス政治の面白いといえば、面白い、興味深いところです。

イギリスで「政治的慣習」が成り立つわけ

なぜ、このような慣習が破られないできているのか……イギリス人に尋ねても、うーんなぜだろう、それがイギリスだから、という人が多いかも知れません。

イギリスは「法の支配」原則が早くに確立した国でもあります。「法の支配」、それは「人の支配」と違い、どんな権力でも法による制約を受けるという原則です。これにより、イギリスでは市民たちの自由が守られてきたと考えられています。

「政治的慣習」も、長年にわたって築き上げられ、大多数の国民が信認している重要な「法」の1つです。13世紀の昔から、イギリスには「国王といえども神と法の下にある」という言葉があります(裁判官ブラクトンの言葉)。

ですから、これらを破るようなことは許されない、という不文律が政治文化として定着しているのでしょう。このあたりが、イギリスの民主政治の「伝統」なのでしょうか。

「貴族院」といわれるイギリスの上院とは?

議会も、日本とはだいぶ様相が異なります。

まず、議会は上院と下院で構成されています。上院は、貴族や聖職者たちで、選挙で選ばれているわけではありません。イギリスにはまだこのような議会があるのですね。

しかし、いわゆる世襲の「○○伯爵」ばかりではありません。一代貴族といって、有識者が一代限りで貴族になり、議員になっていたりもします(一代貴族法、1958年)。

また、日本でいう最高裁判所にあたる「最高法院」の裁判官に相当する「法律貴族」という人たちもいます(というわけで、イギリスの最高裁は議会の中にあるので、当然「違憲立法審査」というのもないのですね)。

イギリス政治の重要原理、下院の優越

といっても、民主主義国家である以上、イギリスは選挙で選ばれた議員で構成される下院を優先しないわけにはいきません。

20世紀初頭までは、保守色の強い上院がたびたび下院の前に立ちはだかり、重要法案を廃案にしてきたことがありました。そこで、当時、比較的リベラル派だった自由党政権は、1911年に「議会法」を制定しました。

この結果、上院は予算など金銭法案に対する修正権を失い、かつ、他の法案についても下院で3会期にわたって可決された場合は貴族院は拒否することができなくなりました。これを、「下院の優越」といいます。

というわけで、今は上院は形式的な存在になりつつあります。そしてそれは、1999年のブレア首相による世襲貴族議員の大幅削減(実に659議席減)により、さらに確立してきています。

なので、注意しておきたいのは、イギリスは「政治的慣習」の多い国とはいえ、「下院の優越は『政治的慣習だ』」とガセをいうと、緒川たまきさんなんかに「ウソツキ」とか呼ばれますから、ご注意下さい。

イギリスといえば、二大政党

さて、イギリスといえば二代政党制の国としても知られていますね。今度は、イギリス政党の基礎知識を、次のページでまとめてみたいと思います。

◎イギリスの政治制度のしくみ
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