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郵政民営化議論ここがポイント!(2ページ目)

郵政民営化議論がいよいよ白熱してきました。推進する小泉内閣と、抵抗勢力とのバトルはすでに始まっています。しかし、彼らに任せきりにしないで、我々も民営化議論、何が問題なのか考えてみましょう。

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【小泉内閣の民営化プランと、それに対する反発】
2ページ目 【全国の「郵便」「郵便局」はどうなるのか?】
3ページ目 【郵貯と簡保という巨大な「公的金融」はどこへ行く?】

【全国の「郵便」「郵便局」はどうなるのか?】

こちらも要チェック! 政治についての基本知識と基本用語

窓口ネットワーク民営化で過疎地の郵便はどうなる

まず、窓口ネットワーク、つまり特定郵便局が民営化されたらどうなるかを考えていきましょう。

たしかに、民営化されると、非効率な(つまり赤字な)特定郵便局は閉鎖せざるをえないかもしれません。特に、過疎地はそうなるかもしれません。それは不便になるかもしれません。

小泉内閣は、特定郵便局は旅行チケットを売ったり、投資信託を売ったり、住民登録などをする「コンビニ化」していくから閉鎖はない、と言っていますが、どうでしょうか。

ただ言っておくと、特定郵便局の大半は集配業務をやっていないのです。

ですから、郵便事業にユニバーサルサービスの義務がある以上、村から郵便局が消えても、ポストを今と同じように置いていれば、郵便は出せます。もちろん配達もそのまましてくれます。

切手などは、地域の人が一番集まるところで売ればいいでしょう。村役場などという手もあります。すでにコンビニでは売っていますし。

小包は、1個からでも集荷に来てくれます。ヤマト運輸などでもやっていることですから、公社が民営化されて、できないことはないはずです。

それでは、過疎地の金融手段はどうなる

郵貯の引出しなんかも、村役場なんかにATMを置けばいいでしょう。村役場が窓口ネットワークに入って手数料をもらうって手もあるでしょう。

郵貯の新規加入は郵便でできるようにすれば大丈夫。都市銀行なんかそうやって口座作りますよね。

簡保は、そりゃ言えばがんばって社員が来てくれますよ。民間生保の人も、県庁所在地からがんばって山間過疎地にまでいって契約とってますから実際。

ということで、ユニバーサルサービスさえ充たすように政府が配慮すれば(その配慮は少なくてすみそう)、特定郵便局が減少したからといって、われわれが不便を覚えることはなさそうです。

不便なのは、特定郵便局ネットワークを利用して「集票」していた国会議員センセイの方々のみでしょう・・・

郵便事業は効率化しないと先行き暗い

では、郵便事業の民営化はどうなるでしょう。

政府は、「民営化すればJRやNTTみたいに郵便事業も効率化し、郵便料金も下がったりして国民も公社もハッピーになる」といっていますが、はたしてどうでしょうか。

そのためには、JRやNTTがおこなったような大リストラを決行する必要があるわけです。両社とも、それをやって効率化したわけです。40万人いる公社で、それができるかどうか。最悪「郵便スト」が起こってしまう可能性もあります。

国の手でそれをしたくないから、郵政民営化するのか・・・とも勘ぐりたくなります。

しかし、そんな血の滲むようなことをやったとしても、郵便事業には暗い未来が待っているのです。

ITと郵便が競合している

1つめに、「ITあれば郵便いらず」という現象が上げられます。

ビジネスの場面で電子メールが使われることはもはや当たり前。為替などなくてもネットバンクで資金が移動し、株券もペーパーレス化。各種チケットもペーパーレス。

そのうち手形までそうなっちゃうと、普通郵便どころか、書留郵便の需要さえなくなってしまいます。

実際、今でさえ年度ごとの郵便営業収入はここ5年で1500億円ほど減少しています(政府資料による)。はっきりいって、「ゆうぱっくが変わりました」くらいでは、この情勢はどうにもならないと思われます。

しかも国内にはヤマト、佐川などの強敵がひしめいているわけで。

日本郵便が国際物流に手を出したら・・・

2つめに、国際物流の競争激化です。首相はよく、民営化した元の官営郵便事業体であるドイツ・ポストを引き合いに出して、あのようにがんばって国際物流で成功すればいい、といっていますが、はたしてどうでしょうか。

国際物流はUPS、FedEx、TNT、DHL(←これがドイツ・ポスト系列)の4大企業に集約され、現在アジア、特に中国のパイをめぐってすでに激しいせめぎ合いを行っています。

ここに2007年から、のこのこと日本郵便が入っていって、とれるパイは残っているのでしょうか? むしろ、2007年までに、4大物流が中国に拠点をおくことによって、日本に進出してくることをおそれる必要があるのではないでしょうか?

最終的に待っているのは「国家財産の減少」?

ということで、郵便の民営化によって効率化がうまく進み、国際的にみて圧倒的に高すぎる郵便料金が下がればいうことはありませんが、うまくいかなくて、かつ国際物流への進出で大赤字を出したら・・・

1ページ目でも解説したとおり、政府案では完全民営化されても郵便会社は政府が最低1/3は出資する持株会社に支配されることになります。ということは、郵便会社が大赤字になると、この持株会社の株式価値が下がる。結局、国の財産が減少する・・・

郵便事業の民営化が悪いとはいいません。しかし、郵便事業だけは官業として残している先進国もたくさんあります。ここは慎重に考えなくてはならないところではないでしょうか。

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