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ロシア・カフカス地方とテロ(3ページ目)

悲惨な結果におわった学校占拠事件がおこった北オセチアのあるカフカス地方。民族・宗教が入り乱れ新たな「世界の火薬庫」といわれはじめています。なぜカフカスでテロはおこるのか。解説してみました。

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【カフカス地方って、どんな問題を抱えた地域なんだろう?】
2ページ目 【チェチェン人と北オセチアの人々の微妙な歴史関係】
3ページ目 【ロシア、プーチン政権の姿勢がテロを引き起こす?】

【ロシア、プーチン政権の姿勢がテロを引き起こす?】

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ロシア帝国主義の負の遺産

さきほどのページでも述べたとおり、チェチェンや北オセチア、さらにいうとシベリアなどはロシアの植民地なんですね。ロシアは、21世紀に残る最後の植民地帝国といえるかもしれません。

ロシアは帝国時代、他の欧米列強と競うように、領土を拡大していきました。特にイラン(当時はペルシャ)やアフガニスタンの覇権をめぐってはイギリスと対立し、その情勢を有利にするためにカフカス地方は併合されたのですね。

そして、帝国が崩壊し、ソビエト連邦ができても、帝国主義はかわりませんでした。反帝国主義を掲げたマルクス=レーニン主義政権ができたのに、指導者が独裁者スターリンにかわったとたん、帝国主義は復活しました。

スターリンは先ほどのページで述べたとおり、民族をいわれなき理由で大量に強制移住させ、勝手に連邦内共和国の境界線を決め、民族をばらばらに引き裂きました。このことが、今のカフカス地方の問題をさらに複雑化させたと思われます。

今も残るロシアの帝国主義

ロシアがこの広大な国土を維持しようとしている理由は、この国土からいろんな地下資源(石油・鉄鉱・石炭など)が産出されるからです。

特に経済がうまくいかず、さまざまな社会問題をかかえているロシアにとって、石油を中心とする地下資源で「商売」することは大変重要なことです。しかし、これら地下資源の多くはロシアの「植民地」から産出されるのです。

だから、ロシアは「植民地」を手放そうとしません。その執念は凄まじいものがあります。独立しようとしたチェチェンは「独立しようとするなら、ここまでするよ」と見せしめのように容赦なく攻撃されました。

そのためチェチェン紛争では20万人もの人々が死亡したといわれていますし、これからもテロや武力衝突で死亡する人は増えることでしょう。

チェチェンでは8月に大統領選挙が行われ(前の親ロシア派大統領は5月にテロで爆殺。ちなみに独立派で闘争を続けるマスハドフ前大統領はまだ大統領を名乗っている)、「圧倒的多数」でやはりプーチン政権に近いアルハノフ氏が大統領に選ばれましたが、この選挙の公正さは、ちょっと疑わしいところがあります。

20万人が殺害されたロシアのかいらい的な大統領候補に、8割もの票が投じられたといいます。にわかには信じがたいことです。



プーチン政権が抱える問題

プーチン政権も、この学校占拠事件で、ひとつの岐路に立たされたといっていいでしょう。

プーチン大統領は、首相であったとき、強硬策でチェチェン独立派を徹底的に攻撃し、いちやくヒーローとなり、それがきっかけで圧倒的支持で大統領に選ばれました。

おととしのチェチェン武装勢力によるモスクワ劇場占拠事件でも、多数の市民の犠牲を出したあとでも、かえって支持が上がったほどです。

このカリスマを、さらに強権政治が支えています。自分と同じもとKGBの側近たちで周りを固め、自分に従わない者には容赦なく圧力を加えていくやり方です。チェチェン独立派はもとより、自分に批判的な記事を書いた民間新聞の編集局長まで、圧力をかけて解任させてしまう始末です。

このような強権政治で、チェチェンなどカフカス情勢が好転するでしょうか? 民族融和こそがテロを引き起こさない重要な要素だと思われるのに、プーチン政権は独立派を追い込んでいくだけです。

そして、一部の過激派による暴発がおきてしまうのではないでしょうか?

これでは、暴力の連鎖が止まることはありません。ロシアは、イスラエルのようにテロとそれに対する報復の応酬がつづくことになってしまうのでしょうか。

「テロとの戦い」といいます。たしかに「9・11」で外部からの攻撃を受けたアメリカは、アルカイダと闘わなくてはならなかったかもしれません。しかしロシアは違うでしょう。ロシアはテロリストと闘う前に、まずテロを引き起こさない国内環境を整備しなくてはならないはずです。


>>2002年の記事。「チェチェン紛争基礎知識」


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