2ページ目 【独裁軍事政権をアメリカが支えたことで火がついたギリシャ国民の反米感情】
3ページ目 【同じ宗教、歴史を共有するセルビアへのアメリカによる攻撃にむかついたギリシャ人】
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【独裁軍事政権をアメリカが支えたことで火がついたギリシャ国民の反米感情】
独裁軍事政権を支えたアメリカへの感情
アメリカは、冷戦時代、いろんな国の共産化を防ぐため、「反共」であれば、たとえ国民を圧迫する軍事政権でも、支援をしてきました。韓国の軍事政権、朴正熙(パク=チョンヒ)政権や、チリの独裁政権、ピノチェト政権などなど、彼らが行った政治活動の抑制=反民主化政策と、人権を無視した高圧的な政治を、アメリカは共産化を防ぐためにはこれも必要悪さ、という考えで黙認、あるいは支援してきました。
ギリシャに対してもそうでした。クーデターによって国を乗っ取ったパパドプロスの軍事政権(1967~74)を、アメリカは「反共だから」という理由で公然と支援します。
軍事政権は政党活動を禁止し、反政府運動の人間を、語るに尽くせないくらいの残酷な手法で迫害し、ギリシャに暗黒時代をもたらしました。
そんな民主政治を否定、抑圧した暗黒の軍事政権を、支えた前科のあるアメリカのことを、ギリシャ国民はあまり快く思っていないのです。
五輪開催でもアメリカの妨害が
ギリシャの反米感情はこの軍事政権支援にはじまっているのですが、それだけではない、ギリシャ人の感情を逆なでするようなことを、アメリカはやってきました。軍事政権が終結したギリシャは、アテネでの恒久的な五輪開催を主張します。まず、1976年のモントリオール五輪が大赤字で開催を申し出る都市が激減。そして1980年のモスクワ五輪は冷戦の影響をもろに受けアメリカら西側諸国がボイコット。
祖先がはじめた五輪を、これ以上けがしてはならない。そういう思いから、ギリシャはアネテでの五輪恒久開催を提案します。
しかし、経済力でまさるアメリカが、五輪開催権を奪取しました。そしてアメリカは、1994年のロス五輪ではじめて商業主義を堂々と持ち込み、五輪を平和の祭典から儲かるビジネスに変ぼうさせていきます。
アメリカに五輪恒久開催を一笑に付され、祖先が創設した「平和の祭典」五輪をビッグビジネスの道具に変ぼうさせられたこと、もちろんギリシャ人は快く思っていません。
イラク戦争でも派兵を拒むギリシャにアメリカの「嫌がらせ」
そんなギリシャ人ですが、かれらは大人ですから、アメリカとの文化交流をこばむようなことはやっていません。むしろ活発に行っています。ところが、こんなことがありました。
2003年、ニューヨーク大学の招きで訪米したアテネ国立工科大学のアンゲロプロス教授。しかし彼を待っていたのは、手錠と拘束でした。そして、イラク戦争に賛成か反対か、執拗に問いただされたのです。
ちなみにアンゲロプロス教授は、手錠をかけられながらも堂々と「イラク戦争には反対」と述べたそうですが。
これにはギリシャ政府も激怒。ギリシャ大使館はFBIに抗議し、アンゲロプロス教授はギリシャ大使館に守られながら、アメリカを後にしました。
ギリシャは、国民の反米感情に配慮し、また政府自体もあまり乗り気でないのでしょう、イラクへの派兵を拒み続けています。
アンゲロプロス教授へのこのひどい仕打ちは、そんなギリシャへの嫌がらせだったのでしょうか?
さらにギリシャの反米感情を高めた決定的なできごと
まあ、こんな感じで軍事政権を支えてきたりしたアメリカを、ギリシャ人は快く思っていないのですが、さらにこれを決定的にした出来事が、数年前に起こりました。それは、宗教が絡んだことでもあります。くわしくは次ページでみていきましょう。
(写真提供:esupply)