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【議会のリストラか慎重さか】
議会の「リストラ」という観念から一院制を採用したスウェーデン
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先進民主国家はみんな二院制だ、と思っている方も多いかもしれませんが、スウェーデンやデンマーク、ギリシアやフィンランドなど、一院制の民主国家もけっこうあるのですね。
特に第二次世界大戦後、一院制に移行する国は徐々にですが増えてきています。世界の傾向は二院制から一院制だ、という人もいるくらいです。
そのなかで、スウェーデンの一院制への以降過程をみてみましょう。スウェーデンは4身分の四院制から始まり、19世紀の中ごろ二院制へと再編されました。第一院の議員は県議会から適宜補充され、第二院は直接選挙で選ばれたのです。
しかし、1970年代、議会を「リストラ」することにしたのです。貴族制度もなくなり、複合民族国家でもないスウェーデンが議院を2つも持つ必要はない。そんな合理的な理由から、伝統的な二院制を廃止し、直接選挙だけの一院制へと移行したのです。「高負担高福祉」の名のもと、国民に多大な負担をかけている国家が、自ら無駄をなくしたわけですね。いかにもスウェーデンらしい話です。
さて、なんか二院制のデメリットばかり話してきたような感じですが、日本が衆議院・参議院に分かれていることで、享受しているメリットももちろんあります。
それは、「選挙が多い」ということでしょう。衆議院は4年ごと(解散があるので実質的には3年半くらいごと)、参議院は議員の半数づつ3年ごとに選挙を行っています。ですからだいたい2年半に1回くらいは、国政選挙があるのですね。
このことは、ときの政権に大きな緊張感を与えます。政権が交代するのは衆議院総選挙でまけたときだけ、というのが制度上ですが、実際には参議院で負けて責任をとって交代した政権も多々あります。ひんぱんに選挙があることによって、国民は政権に無言のプレッシャーをかけることができるのです。
ですから、もし日本が一院制になったら、そのぶん選挙の頻度をふやす必要があるように思われます。いま衆議院の任期は4年ですが、これは3年と短縮し、かならず3年おきには選挙があるようにする必要があるでしょう。
いずれにしても、一院制に向けた論議、はたして国会議員たちがみずからをリストラすることができるのかどうか、私はけっこう見ものな議論が展開されるのではないかと思うのですが。注目しましょう。