2ページ目 【私立大学への補助や助成は憲法違反?】
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【私立大学への補助や助成は憲法違反?】
憲法違反だから改正すべきか、それとも9条改正への足掛かりか
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さて、いちばんよく問題になるのが、この条文です。
日本国憲法 第89条
公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
一見するとまあ当たり前、税金を宗教団体などに利用させるな、与えるな、ということなのですが・・・もう1回、下線をつけて読んでみましょうか。
日本国憲法 第89条
公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
そうなんです。宗教上の組織や、公の支配に属しない教育機関、つまり学校に税金で補助をしちゃいけないって読めちゃうんですね。
こうなると、私立の学校に助成金を与えることが憲法違反になってしまいます。そうなっては教育に著しい不公平を生じさせるだけでなく、補助金が一切ない状態では多くの私立大学の学費は莫大なものになってしまい、大学にいける人が極端に減ってしまうでしょう。
ということで、この条文を改正しよう、という動きがマスコミなどではなかなか流れませんが、意見としては有力なものがあるのですね。
もちろん、私学助成などは憲法違反とはいえない、つまり、私立の学校などは学校法人として「公の支配」に属している、という意見もあります。「89条問題をきっかけにして、いっきに9条改正に持ち込もうとしている」という人もいます。
実際、そんな思惑の人もいることは事実でしょう。9条と89条、いっしょに持ち出す人もけっこう多いですしね。
しかし、紛らわしいことは事実。私学やNPO(非営利団体)への補助、助成などが憲法上おおっぴらにできるように、条文を改正してもいいかもしれません。
とはいえ、89条は政治と宗教とを分離させるための重要な条文ですから、その精神が損なわれないような慎重な改正がのぞまれるところでもあります。