なぜ上場廃止の基準に該当するのか?
~西武のケース~
●具体的に「上場廃止基準」とはどのような要件なのでしょうか?一例を以下にご紹介します。◎上場株式数が4,000単位(4,000単元)未満
◎大株主上位10名、特別利害関係者およびその企業が持つ株式数は、上場株式数の75%超
(当分の間80%以下、上場後最初の決算期に75%以下、猶予期間1年間)
◎上場時価総額10億円未満、又は上場株式数の2倍未満(猶予期間3ヶ月)
◎売買高についても、一定水準以上
西武鉄道の場合は、実質の株主構成ではグループ10社計の持ち株比率は63.68%から88.57%となります。
◎大株主上位10名、特別利害関係者およびその企業が持つ株式数は、上場株式数の75%超
(当分の間80%以下、上場後最初の決算期に75%以下、猶予期間1年間)
に該当するかもしれないこととなります。
大株主が株を持ちすぎると上場廃止? |
●では、なぜ、大株主の持株比率が75%(当分80%)というように、高いと上場廃止になるのでしょうか。
上場廃止にする理由のひとつに、公正な価格形成が困難な状況になった場合、というものがあります。
発行済み株式総数のうちの8割もの株券が、大株主・利害関係者という通常株券を売却しないと思われる株主に保有されている、という状況は、裏返せば、それ以外の株券は、発行済み株式総数の2割程度となります。さらに浮動株(1単元以上50単元未満の株主が保有する株式数の合計)は8.5%という非常に流通量の少ない銘柄です。
マーケットの原理からして、品物数の少ないモノは、値段がつりあがってしまうのは自然のことです。
このように、公正な価格(=株価)がつきにくい状況にあるにもかかわらず、その大株主の保有する比率を引き下げるために、グループ会社社員など1200人の名前を借りて実際はコクドやプリンスホテルが保有する株式数を少なく報告していたのです。
●さらに、事件を予想した西武は・・・
さらに悪質なことに、コクドは西武鉄道の上場維持のため、この有価証券報告書虚偽記載発表前の9月末までに西武鉄道株を市場外の相対取引で売却していました。これによってコクドの今年9月末の持ち株比率は48.6%。グループ10社の比率は74.9%になっています。
弱みに付け込んだ株式取引か? |
これがまた弱みに付け込んだやり方と受け取らざるを得ないのですが、どんなところが西武鉄道株を買ったのかというと、ほとんどが取引先企業なのです。西武グループといえば、鉄道、ホテル、流通、レジャーなど業界も幅広く、飲料、電機メーカー、スポーツブランドにとっては大口取引先です。
キリンビールグループ、キリンビバレッジ、三国コカ・コーラボトリング、コカ・コーラウエストジャパンなどコカ・コーラグループ、キユーピー、キーコーヒー、ゴールドウィン、小田急電鉄などが購入したことをがわかっています。未公表の企業もありますが、約50社が虚偽記載を知らずに西武鉄道株を購入したと見られています。これらの企業には当然「だまされた」という思いがありますので、コクドに対し、西武株を買い戻すよう請求しています。
その上、もっと悪質なことに、西武鉄道株が上場廃止になるかもしれないことを認識していた上で、これら取引先に西武株を売却していたとすれば、コクドはインサイダー取引違反に該当します。有価証券報告書の記載について虚偽であることを公表する前に株式を売却しているのですから。
次のページでは、これらの情報開示に対するルール違反から投資家を守るために、どのような動きになってきているかをご紹介します。