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オーストラリアの「独立運動」(3ページ目)

れっきとした独立国であるオーストラリア。しかしオーストラリアはいまだ完全独立が果たせておらず、「独立運動」があるといいます。いったいどういうことでしょうか。

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【オーストラリアはまだ「完全独立」していない?】
2ページ目 【オーストラリアにいまだ残る「総督独裁制」】
3ページ目 【人種の「るつぼ」としてのオーストラリア】

【人種の「るつぼ」としてのオーストラリア】
イギリスとのつながりを断ち切る「多文化主義」の進行


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オーストラリアは、アメリカに並ぶとも劣らない移民大国で、アメリカとはまた違う「人種の『るつぼ』」としての性格を持っています。

オーストラリアは人口密度が2人/平方kmと、経済規模からして人口が圧倒的に少ない国です(アメリカは29人/平方km、日本は333人/平方km)。つねに労働者不足に悩んできました。

そこでオーストラリアは建国以前からさまざまな移民を受け入れてきました。オーストラリア人というとイギリス人移民の子孫、というイメージがあるかもしれませんが、実際にはかなり初期の段階からアイルランド、ドイツ、イタリアなどから移民を受け入れてきました。

それでも1960年代までは、「白豪主義」政策といって、白人以外の移民をほぼ一切受け入れないようにしてきました。しかし、1960年代になるとヨーロッパの経済成長によってオーストラリアへの白人移民が減るようになります。こうして、1970年代からはアジア系の移民も受け入れざるを得なくなります。

こうしていまでは東欧、中近東、東南アジア、オセアニア諸国とさまざまなところから移民がくるようになり、国の政策も白豪主義から「多文化主義(マルチカルチャリズム)」、積極的に白人以外の文化を受け入れる政策へと転換するようになりました。

これによって、2025年にはアジア系のオーストラリア人は20%くらいにまで増加し、反対に、イギリス系のオーストラリア人は60%くらいにまでその割合を減らしていくとみられています。まさに、多様な民族が同居する国家に変わりつつあるのです。

そんなオーストラリアですから、いつまでもイギリス国王を国家元首に戴くわけにはいかないでしょう。早かれ遅かれ、オーストラリアがイギリスから「完全独立」する日はくるに違いありません。

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